Interview 2018.06

6月23日にリリースされる『lyrics -re:recording-』。
2008年にリリースされた1stアルバムを全曲ガット・ギターで再構築した本作は、決してノスタルジーな作品ではなく、今の“高木フトシ”を存分に堪能できる最新のアルバムである。
彼のソロ・ワークにとって外すことのできない作品と曲たちに改めて向き合いながら、じっくりと語ってもらった。

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interviewer:AKIRA

音楽で世界を変えることはできないけど、
世界を変える人は絶対に音楽を好きな人だから。
その人のために歌いたい




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●アルバム完成おめでとうございます。オリジナルの『lyrics』(2008年3月25日発売の1stアルバム)から約10年を経て、こうしてまたその作品と向き合うことができて、すごく感慨深いものがありました。

俺としては新鮮だったんだよね。それが自分でも驚きだった。自分が飽きっぽい性格だとは思わないんだけどさ、やっぱり新曲のほうがいいじゃん。ライブでやる上では。

●そうですね。そのほうがフトシさんっぽいです。

そうそう。自分的にも盛り上がるし。でも『lyrics』の楽曲ってずっとやり続けてるからさ。それはきっと良い作品なんだろうなっていうのは感じてたからね。だから録り直すこともそんなに苦じゃなかった。本当はこういうの、あんまり好きじゃないんだけど。

●ですよね。だから再録すると知ったときは驚きました。

そもそもはスタッフに「ソロ10周年でなにかやりませんか?」みたいな話をされたのがきっかけかな。あとライブで「SLIDE」をガット・ギターで演奏するっていうのをここ数年やってて、それが意外と評判良かったんだよ。たぶんそんな流れだったと思う。それで「ガット1本で『lyrics』をやるのも面白いんじゃないですか?」って言われて、それいいなと思って。

●そういう流れだったんですね。

あと冨田さん(冨田真希さん。本作収録の「So」にパイプ・オルガンで参加)と一緒にレコーディングをしたいっていう話をけっこう前からしててさ。でも当時はvezがあったりとか忙しかったから、後回しになっちゃってて。で、昨年末にvezが止まって、そういった流れを思い出して「じゃあやりますか」と。だからきっかけはソロ10周年ではあるかな。でも俺さ、良いか悪いかはわからないけど、なんか流れみたいなものがあるじゃん(笑)?

●ありますね(笑)。自然とそういうふうに導かれていくときが。

そう、なんも考えてないのに(笑)。今回もアルバム作るってなったら、沖縄(6月23日の沖縄outputでのライブ)も決まったりして。だからタイミングとしては合ってるのかなって。

●本作を聴いた上で改めて思ったことなんですが、詞のテーマが色あせてないですよね。とても不変的なメッセージが並んでいるなと。

不変的って言葉が当てはまるような崇高な作品だとは思ってないけどね(笑)。だけど、“高木フトシ”っていうひとりの男の精一杯が詰まってるなとは思う。でも、10年前はそれがすごく恥ずかしかったの。

●オリジナルの『lyrics』がですか?

うん。それこそレコーディングとかもお金かけてないし、入れる音にしても、ベース入ってなかったり、ドラム入ってなかったりして。さらに言うと、こんなアルバムを作ってる人は当時いなかったからさ。“あくまでアコースティックだけど、アコースティックじゃない”という音楽はなかったじゃん。

●そうですね。稀有な作品でした。

そんなことを10年前にやったからさ。だから自分でジャッジできないんだよ。俺と藤井(藤井辰好さん。長きに渡り高木フトシ音源のエンジニアを担当)はやってて楽しいんだけど、比べるものがなかったから。でも、10年経って改めて向き合ってみたら良い曲たくさんあるし、本当の意味での等身大をアルバムとして作ってるなって思ったよね。だけど……本当は恥ずかしい(笑)。

●良いアルバムだけども(笑)。

本当に裸だからね(笑)。でも嘘偽りはないから。それは『lyrics』に限らず一貫してやってきたことだけど、特に『lyrics』は今でも胸張って歌える曲がたくさんあるなって。それが確認できたのは良かったかもね。「これでいいんだ」って思えたよね。俺の音楽はこれを基本に1個1個積み上げていけばいいんだって感覚にもなれたしさ。ただ……「So」はねぇ……(笑)。

●本作のハイライトと呼ぶべき曲ですよね。冨田さんがパイプ・オルガンで参加されています。

ほんと自分で言いたくないんだけどさ、神がかっちゃってんじゃん(笑)。

●あれは本当にすごいですよね。ちょっとありえない完成度というか。

もう怖くなっちゃって(笑)。俺担ぎ上げられてしまうと思っちゃったから。だからMCでも「俺そういう奴じゃないから!」って事前に言ったりしてるの(笑)。「So」だけはね……第三者として聴けちゃったんだよ。

●それは冨田さんの存在が大きいですよね。

うん。で、レコーディングの仕方も特殊でさ。最初俺だけでギターと歌を録ってから、それを冨田さんに聴いてもらいながら弾いてもらったんだよ。だから客観的に聴きながら……これはまずいなと(笑)。「すげえのできちゃってんな」って思って。だけどたぶんそれも「So」って曲の持つ力なのかなと思って。だからつくづく思ったよ、曲って恐ろしいね。

●生き物ですよね。

うん。人が聴いて、それを解釈する人がいて、それに動かされる人がいて、そこに引っ張られるように動いていくことってあるんだね。今回の沖縄でのライブも、上江洲(上江洲修さん。沖縄outputの店長。元Naked Loftの店長でもある)のことが大きいけど。でも「So」はそういう曲なんだろうね。

●この曲には何度も導かれてますよね。

だね。それこそ「帰る場所」とかもね。正直歌っててつらいんだけど、でも歌わなきゃいけない曲だなって。それも今回のレコーディングで改めて思ったね。

●本作は純粋にガット・ギターと声が基本じゃないですか。だからこそ先ほどおっしゃった“裸”っていうのがより伝わるし、オリジナルとはまた違う作品のように聴こえてくるんですよね。

それはたぶんね……歌うまくなったんだと思うよ(笑)。なんやかんや、それがいちばんでかいんじゃないかな。だからギターのこととかをすごく言われることが多いんだけど……やっぱり歌だよ。それはやっぱり進化してないと、聴いてもピンと来ないと思う。

●そうですよね。本当に失礼なことを言いますが、今回は本当にボーカリストとしての成長をすごく感じたんですよ。それは純粋にすごいなと(笑)。

そりゃそうですよ! 何年やってると思ってんだ(笑)。ほんと最近習いたいくらいなんだよ、ボーカル。でも習ったら終わりなんだよね。やっぱ自分で探して見つけて積み上げていかないとね。だから……時間かかるよね、何事も。

●それは本当にそうですよね。ただ、本作はとてもリラックスした感覚というか、良い意味で力の抜けた形で歌われている印象です。たとえば「So」の終わりのほうにあるシャウトなんかも、今までと違うなと思ったり。

前は特に“怒り”のほうが強かったんだよ、俺のシャウトって。でも最近は違ってきてるかな。ただ「So」のシャウトに関してはちょっと計算してるけどね。やっぱりパイプ・オルガンが入るからさ。

●ああ、なるほど。

そこにHATEから積み重ねてきた俺のシャウトを入れても、なんか台無しにしちゃうなと思って。というか……もうそういう歳でもないので(笑)。

●いやいや(笑)。でも本当に自然と入ってくるアルバムですよね。テーマとしてはオリジナル同様にズシリと重いんですけど、それがスッと体に入ってくるというか。

うん。あとやっぱりオリジナルにあったような「始めます」感はないよね。やっぱりあくまで再録は再録なんだよ。でも、けっこうオリジナルの『lyrics』もすごかったって改めて思ったよ。

●それも同時に感じました。あれだけのバリエーションがあった上で、“高木フトシ”というアーティストが全体に息づいているアルバムだなと。

「Dolphin」とか、コードすら忘れてたんだけど(笑)。いや、すごいアルバムだったんだなって。でもなにがすごいって、マスタリングなのよ。加瀬さん(加瀬竜哉さん。オリジナル『lyrics』のマスタリングを担当)は巧みなのよ。だからそれは今できない悔しさもあるんだけど、その感覚はどこかにあって、今回の新しい『lyrics』にも鳴ってる気がする。だからオリジナルのときはそういう出逢いがあって、今回は冨田さんとの出逢いがあって、そういうことがつながってるなと思う。

●それぞれに作品に力を与えてくれていますよね。

あとやっぱり藤井だね。藤井もエンジニアとして、あの頃とは技術もなにもかも雲泥の差だからさ。パイプ・オルガンもよく録れたなって思うし。

●教会で生音を録音したんですよね。

そう。今時パイプ・オルガンなんてMIDIつないでキーボードで録ればいいじゃん。それをわざわざパイプ・オルガン置いてあるところまで行ってさ(笑)。

●マイク何本も持っていって(笑)。

やる必要ないじゃん(笑)。でもそれがやりたかったんだよ、藤井も俺も。やってどうなるかわからないけど、なんかそれが楽しかったんだよね。実験みたいな感覚もあって(笑)。で、教会で実際に録り始めるとね……けっきょくど真ん中の鳴りがいちばん良かったんだよ。

●教会の中央がいちばん響いたと。

それはやっぱり建物自体がパイプ・オルガンと同時に楽器なんだよね。そういうのも改めてわかって、すげえなって。建築家ってすげえなって(笑)。そういうのも楽しかったな。でもそれをちゃんと録れるかっていう不安はあったんだけど、結果あの仕上がりだから藤井はすごいなって。ありがとうって思ったよね。

●本当に教会の中にいる感覚になりますもんね。

だよね。それは自分でもすごいなって思う。だから余計「まずいな」って(笑)。そもそも「So」自体が崇高な曲だからさ。……なんで俺あんな曲作っちゃったんだろ?

●いや、それ今言っちゃいます(笑)?

反省しないと(笑)。でもこの前ブログにも書いたんだけど、「So」って曲があって、そこから派生した物事があって、だんだんやっぱり愛と平和についてとか、自分自身の生き方にとっても、逃げられないところが出てきちゃうんだよ。あの曲を歌う上で。

●難しいところですよね。

教会でチャリティー・ライブとかをやってるがゆえ、あと愛だの平和だの声高に叫んでるがゆえ、言えないこととかできないこととかあってさ。でもそういうことから逃げずにやってきたんだなと思って。その積み重ねたものが今回のアルバムにも反映されてるから。「やったぜ」って感じはあるね。

●手応えはありますよね。あと、ジャケットのデザインがほぼそのままでというのも面白いなと思いました。

それもスタッフのアイディアだね。でね、本当はオリジナルの『lyrics』は紙ジャケで出したかったんだよ。当時は予算とかの都合でそれができなくて。今回はそれができるから嬉しいね。あとは津久井(『lyrics』のアート・ワークを担当)の感覚というかセンスというか。俺の曲を聴いての想いがあのジャケットには明確に出てるしさ。そこもオリジナルだからね。

●それと、やっぱりCDという形で欲しかったという方も多くいると思うんですよ。オリジナルの『lyrics』はすでに廃盤(iTunesで配信中)になっているわけですから。

うん。特に「So」はほぼ毎回ライブで歌ってるから、物販でよく聞かれてたらしいんだよ。だから盤で欲しいって人がありがたいことにたくさんいてくれて。それをこうやってより最上の状態でみんなに届けられるのが嬉しいね。これが今の『lyrics』ですって胸を張って渡せるから。

●そうですね。そして先ほどもお話に出ましたが、このCDを持って、沖縄outputでのライブに向かえるというのも大きいですよね。この日は沖縄での戦闘が終わったとされる“慰霊の日”ですよね。

それこそ戦争体験者じゃないから、本当のところはわかんないことばっかりだけど……。その上で、ただただ思うのは、アメリカと中国と日本があって、その3つの関係性で沖縄が今ああいうことになってて。沖縄は日本だからさ。これが日本人全体の問題だってことくらいは俺でもわかるからさ。そのひとりとして、歌を届けたいよね。そこへの想いも、『lyrics』を最初に作ってからの10年間のことも全部を持ってけばいいのかなと思う。たぶん上江洲もそれを期待してるだろうし。うん……がんばるよ(笑)。

●はい(笑)。しかしまあ、怖いくらい全部噛み合ってますよね。そういう着地点が用意されているというか。

不思議だよね。偶然なんだけど。ほんと不思議。

●オリジナルの『lyrics』のツアーのときも、長崎での初ライブがあったりしましたよね。

あったあった。それも偶然だよね。でも……10年も経って、愛と平和という観点でいうと現状はよりひどくなっているからさ。それはなんか悲しいよね。それでも俺は思うんだけど、音楽で世界を変えることはできないけど、世界を変える人は絶対に音楽を好きな人だから。その人のために歌いたいからさ。というのは強く思うね。そうそう、沖縄行ったら、辺野古にも行こうと思ってさ。

●基地の移設問題の真っ只中ですよね。

それも中国とアメリカと日本がさ、こんな関係になってるからであって。そのせいで辺野古にあるいくつかの命が奪われるわけでしょ。人間って本当に情けねえよなって思う。だから……謝りに行こうと思って。「ごめんな」って(笑)。俺じゃどうにもなんないけど、謝ることはできるからさ。

●その流れで最近ライブでやっている新曲の話も伺えればと思いますが、そのあたりのテーマが込められた曲が多いかなと思ったんです。「After the war」なんて、今お話されたような曲だと思いますし。

だね。まさにそう。

●個人的には、先日の吉祥寺曼荼羅で聴いた「The emperor's new clothes」がすごく印象に残ってて。「裸の王様」がテーマだとおっしゃってましたが。

うん。それはなんかすごく思ったことがあって。トップに立つ人間の在り方がおかしな感じがするというか。担ぎ上げられてりゃいいのにさ。トップに立ってる人間はさ、詐欺師みたいなグダグダ言う奴の話に乗っかってりゃいいんだって。だから「裸の王様」って良い話だなと思って。

●そうですね。その感覚はわかります。なんのプライドだってものが見え隠れするときがありますよね。

そう。だから安倍ちゃんはさ……安倍ちゃんって言っちゃうけどさ(笑)。

●ハハハハハ。でもそういうことですよね、言いたいことは(笑)。

そうそう(笑)。だから憲法九条のことも、北朝鮮とロシアと中国とアメリカと日本の話でしょ? 大の大人がそんだけ集まってさぁ、ってなるじゃん(笑)。

●「いつまでたっても……」というね(笑)。

そんなこと考えなくてもわかるだろってさ。だからトランプの言うこととか、プーチンの言うこととか、もっと斜に構えてもいいんじゃねえかって思うんだよな(笑)。

●はいはい(笑)。もっと未来に目を向けて。

そう。だからそれは新曲の「Edit」にもつながってるかな。けっきょくのところ、国がどうであれ、その場所にはなにかを開発してる人たちがいてさ。その人たちはそこを追いかけてるわけじゃん。それを応援したいよね。

●新曲の詞を見せてもらいましたが、どの曲も考えさせられますよね。「In the light」とかも。

それは森鴎外の言葉から来てるんだけど。モリカケ問題もそうだし、アメフトの件もそうなんだけどさ、若者がなんでもっと堂々と「間違ってる」って言わないんだろうと思って。それを考えるうちに森鴎外の“自ら光る小さなともし火になれ”って言葉にたどりついてさ。そこから俺もまた始めようと思ってできた曲だね。だから「In the light」は大事な曲になると思うよ。「So」や「Death in the snowstorm」みたいな。それがやっと作れたよね。

●『lyrics』が発売されるという状態ですが、すごく“次”を意識されているなと思います。それも、今までと違う形で表現されているような気がしてて。

うん。でもそれはね、『lyrics』を録り直したおかげだと思う。

●ああ、なるほど。新曲たちは歌詞において伝わりやすい表現をされていますよね。逃げてないというか……。

いや、逃げたいよ(笑)。ほんとは前向きな曲とか歌いたいよ俺だって(笑)。

●でもそれはさせてくれないと(笑)。新曲もレコーディングする予定ですよね?

うん。でも今(新曲は)4曲あって、1曲省かないといけないからそれは悩んでるけどね。だけどベースとなるものはできたと思うよ。“次”の段階のね。ただ、またどれもギター難しいんだけど……。

●そこも逃げてないですからね(笑)。でも最近の曲だと、「緑の深淵へ」(「OUTSIDE SINGLE 13/Thirteen」収録)とかから、ギアが変わったように思うんですよね。

変わったね。そこからのベースがやっとできたかな。だから最新の俺も楽しみにしててほしいね。




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【全曲解説】

「SLIDE」



●まさに始まりにふさわしい曲ですよね。

うん。「SLIDE」は今回すごく悩んだのはテンポかな。ライブでやるときは、最近スロー・テンポでやってるから実はそれで一瞬録ってみたんだけど、なんか違うなと思って。ほら、10年経ってテンポ・ダウンするのは……ちょっとかっこ悪いなって(笑)。

●ああ、はいはい(笑)。プライドとして。

みんなからしたらどうでもいいと思うんだけど、俺としてはまだ抗いたいと思って。だからオリジナルと変わらないテンポで録ったんだよね。そもそもそれがダサいんだけどさ(笑)。でも“高木フトシ道”としてはさ。正直なほうがいいのかなって。

●先月観たライブでもこの曲を歌われていましたが、とても誇らしげに歌ってるような気がしたんですよね。だからこの曲の在り方っていうのも、当時とはぜんぜん違うのかなと。

昔はたぶん自分に対して歌ってる感覚が強かったと思うんだよね。でも最近はぜんぜん違ってて、“なにか”に対して「SLIDE」を歌いたいんだよ。その“なにか”ってのはいろいろあるんだけど。周りの人だったり、ニュースだったり。

●ですよね。だからまた改めて、俺もこの曲に背中を押されちゃったんですよね。

ああね(笑)。そういう曲だよ「SLIDE」は。

●そして、アウトロ部分に歌詞が少し足されてますよね。

ああ、実はずっと歌いたかったんだよ、これは。本当は明確な歌詞を歌うのは俺すごく恥ずかしいんだけど(笑)。だから10年前はそれを胸の中に秘めてたんだけど……今回はちゃんと歌った。これを今しゃべってても恥ずかしいんだけど(笑)。

●でもアルバムの始まりとして、すごくポジティブですよね。

だね。大事な曲だよ。


「Graphic Pain」



●おそらくオリジナルといちばんギャップがあるのはこの曲だろうなと。元々は打ち込みも入ってますし。

ね。でもこれもガットでやってみたら、意外と良かったんだよね。

●そうですね。曲のイメージはまったく変わってないというか。

俺はBメロが好きなんだよね。「何を誓う」ってさ。テーマは宇宙だよ。今だと「はやぶさ2」は順調に動いててさ、でも大事なのはその先じゃん。その先で……このBメロが活きてくる気がする。進化というか、手に入れることができ始めたときにさ。だから、進まないとね。進むためには痛みを伴うから。それをね……蓮舫さんに歌いたかった(笑)。

●ああ、そんなことがありましたね当時(笑)。

「ほんとに必要なんですか?」とか言ってさ(笑)。そこは必要なんですって(笑)! そんな感じだね(笑)。


「蒼い宝石」



これはね、俺の中でNIRVANAなんだよね。ぜんぜん似てないと思うけど。意識としては、カート・コバーンからの影響を素直に出した曲かな。歌詞も含めて。

●たしかにそうですよね。サビとか特に。

だね。だから俺にとっては『DETOROIT』(THE HATE HONEYの1stアルバム)に入っててもおかしくないかなと思う。

●それはイメージできますね。すごくフトシさんらしい曲ですし。

らしいって言われるとなんか……すごくかっこいいからさ、この曲(笑)。

●そこは恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか(笑)。ホントかっこいい曲ですから。

本当ね、良いアルバム作っちゃってるよね俺(笑)。ハハハハハ。なに言ってんだか(笑)。

●いやいや、そういうの大事です(笑)。


「Killing Me」



意外といちばん人気あるんじゃないかな? 俺ぜんぜんライブでやらないけど。なぜかミュージシャンからはこの曲評判良いんだよね。なんだけど……詞が陳腐なんだよね、俺に言わせると(笑)。

●ああ、言いたいことはちょっとわかりますね。比較的ストレートですし。

なんだろうな……軽いんだよ。直接的じゃん。だから歌いたくないんだと思うんだよね。こんなこと言うと「だから売れないんだよ!」ってまた言われそうだけど。だったら売れなくていいって思っちゃうよね(笑)。

●また悪い癖が(笑)。

いや、良い曲なのはわかってるの。俺作ってるし(笑)。とは思うんだけど……「みんなこういうやつが好きなんだろ?」って思っちゃうんだよ(笑)。

●ああ、そういうニュアンスで(笑)。「どうせ……」的な(笑)。

そうそう(笑)。で、今回のやつはすごくシンプルにしたから、なおさら「やっぱり良い曲だなぁ」ってなっちゃうわけよ。本当はこの曲、3パターンくらい録っててさ。ちょっとハードなストロークでやったりとか。でもね、最終的にやっぱり「みんなはこれが良いだろうなぁ」ってところにしたよね。だから……恥ずかしいよこれも(笑)。

●タイトルも印象的ですよね。

タイトルはね、ロバータ・フラックの「Killing Me Softly」って曲があって、それからきてるね。うちのお袋がさ、家で常にアイス・コーヒーを作ってたんだけど、それがネスカフェだったんだよ。で、当時ネスカフェのCMで「Killing Me Softly」が流れてて、お袋が好きな曲だったんだよね。とはいえお袋に書いた曲ではないんだけど……そのへんの流れも踏まえてるかな。

●ああ、それを知るとまた面白いですね。

そう、豆知識(笑)。タイトルの本当の意味を初めて言ってみた(笑)。

●10年目にして(笑)。

でもロバータ・フラックの「Killing Me Softly」も良い曲だから、聴いてみるといいかもね。


「帰る場所」



●こちらは長くライブでも歌われている曲で、いわゆる子供の虐待などへのメッセージがありますよね。

この曲はもうね……。なんかさ、ネットのニュースとかでその手のやつを見つけちゃうと、けっこう関連で同じようなニュースがたくさん出てくるんだよ。だから減ってる感覚がないんだよね。だからこそ「帰る場所」こそ本当にいちばん大事な曲で、強く歌い続けるべき曲だろうなって。前から言ってるけど、俺は子供いないからこういう曲を歌うことに抵抗があった時期もあるけど……今はもう関係ないからさ。

●そうですね。なにより大切なメッセージだと思います。

そんな簡単なことくらい、俺だってわかるからさ。なにがあったか知らねえけど、それはダメだろってさ。

●はい。すごく簡単なことなんですよね。時代とかの問題じゃなくて。

ね。だから……大人が大人として率先して、そこに出くわしたら守るべきものだと思うんだよ。虐待はよくないよ。だから、子供の「帰る場所」はどこでもいいと思うけど、「帰る場所」がないのはダメだと思うからさ。歌っていきたいよね。


「Dolphin」



この曲はホント難しくてさ。「どのコードだったっけ?」て、最初コピーもできなくてさ。

●自分の曲なのに(笑)。

そうそう(笑)。大変だった。オリジナルは藤井の打ち込みやマスタリングの妙によって完成してる曲だからさ。なおさらこれをどうやってガット1本でやろうかっていうのは悩んだよね。だから正直今回は外すこともできたんだけど……沖縄のこととか考えたら、海にまつわる曲があったほうがいいなと思って。それでなんとか録ってみたんだけど。

●なるほど。そもそもフトシさんの曲には海をテーマにしているものも多いですしね。歌詞としては、おとぎ話のようなテイストですよね。

うん。まさにそうだね。絵本みたいなイメージ。

●この曲がアルバムの真ん中というのも絶妙ですよね。

そうだね。フックになってるよね。


「Burny」



●この曲はもう語る必要もないというか。お友達の曲ですよね。

だね。HATEの「IN THE SUN OF LOVE」とセットで聴いてくれるといいかな。歌詞はつながってるので。まあ、アイツが天国にいるとか、どこにいるとかはわからないんだけど、でも……たまにライブ中、俺のそばにいるような感じがするんだよね。まあ、気のせいだと思うけど(笑)。

●あら、良い話だと思ったら(笑)。

そういうのいっさい信じないからさ俺。信じてないし嫌いなんだけど、なんか一瞬「あれ?」って思うことがたまにあって。まあ、いてほしいときにはいないんだけどね。

●そういうものですよね(笑)。

うん。それがバーニーだね(笑)。


「Sorrowful」



●ソロを始めてすぐくらいの頃からライブでやっていた曲ですよね。初めて聴いたときにすごい衝撃を受けたのを覚えてます。

良い曲だよね。でも歌はすごく悩んだんだよね。

●そうですよね。オリジナルとぜんぜん歌い方が違いますし。

ディストーションを踏んでるのと踏んでないのとでは違うしね。なによりも「Sorrowful」の詞は、より映像を見せたいんだよね。だからそれをうまく伝えられる歌い方を、すごく考えたよね。

●淡々としているようで、すごくドラマチックに響いてきます。

だけど、ドラマチックすぎると飽きちゃうのよ。それだと恩着せがましくなっちゃうから。だからそこはちょっと引くんだけど、後半は引きようがないじゃん。

●ですよね。サビの感じとか。

うん。それはすごい難しかった。そこだけ何度も歌った気がする。いわゆる普通の構成じゃないという単純な難しさもあるし。徐々に徐々に上がっていって、そのピークをどこに持ってくるか、みたいな。その苦しさを10年経って改めて感じたよね(笑)。でも良い曲だと思ったよ。ほかにないと思えるからさ。


「水彩の赤」



これは「Sorrowful」とつながってるんだけど。最後に雪がバァって舞ってくる映像を見せたいから、そういう表現を目指したんだよね。その雪がおさまったときに、「もう一度君に会いたい」って最後の歌詞が突き刺さればいいなって。

●そうですね。この曲もストーリー性が強いです。

俺の中では、亡くなっていった大切な人たちにもう一度会いたいっていう思いがあるから。残された側には当然それはあるわけじゃん。その悲しみを持ってさ、次の「So」に入りたいんだよね。


「So」



●まあ、こちらは本編でもだいぶ話されましたが。フトシさんの言う“愛と平和”をこめた曲ですよね。

だね。でもホント、この10年で嫌というほど考えたからさ。俺の場合、偽善的になってた部分もあるだろうし。だからこそ批判もたくさんあったし、茶化されたりもしたしさ。そのたびに考えたからね。それでもやっぱり最終的には、ネイティブ・インディアンが言う「So」という言葉の意味に落ち着いちゃうんだよな。俺らがやってることは音楽だから。なんかの役に立つとか立たないとか、そういうもんじゃなからさ。ただ、音楽の力は信じてる。やっぱり最後の最後はさ、逃げちゃいけないことってあるじゃん。どんな人間でもさ。それが詰まってるような気がするよね「So」は。


「Last Song」



●これはもう、自分としては言葉にできない曲ですね。

ああね。でもたぶん、オリジナル『lyrics』のツアーのとき以来じゃないかな、歌ったの。だから改めてこの詞を読み返していろいろ思い出したんだけどさ、HATEの歌なんだよね。歌詞に出てくる内容って、HATEのときの歌詞なんだよ。

●ですよね。「あの二人が作った星空」という歌詞は「blueberry motel」に出てくる二人だったりとか。そしてそこに、「僕はあなたを愛している」という言葉があって。

「愛される生き方」につながるんだよね。だから、俺にしか歌えない曲だよ。でも、これで終わることですごくまとまってるよね。

●ですね。同時に、とてもパーソナルなアルバムなんだと改めて思いましたね。“高木フトシ”という音楽だけじゃなくて、人となりを知るためにとても大切な作品なんだなって。でもオリジナルのときよりもミニマルな仕上がりのはずなのに、さらに外に向かって広がっているような気もします。

ねえ! 俺もそう思う。そんな音楽ってさ、ありそうでないじゃん。だからみんなも作ればいいのになって思う。恥ずかしいけどさ。いろんな人の『lyrics』を聴いてみたいと思うよね。一切合財のエゴとか、人の評価とかを度外視した作品みたいなものをさ。それが広がっていったら面白いだろうね。等身大でさ、そこに全身全霊をもって魂こめてたら、それで十分じゃない。売れるとか売れないとかは、自分で決めることじゃないからね。

●はい、まさにそのとおりのアルバムだと思います。

うん。だからみんな、ぜひとも聴いてください(笑)。


interviewer:AKIRA
photo:sentaro


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