Interview 2014.08.14

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1stアルバム『lyrics』から6年。
ライフ・ワークとなったソロ活動の中で育み、身に付けた“高木フトシ”という個性と自信。
それらが宿ったニュー・アルバム『♭ [ flat ]』と『# [ number ]』に込められた想い。
彼の現在地を、ここにある言葉と、音と詞でじっくりと確認していただきたい。

interviewer:AKIRA

●まずは、vezの全国ツアー、お疲れ様でした!

お疲れ! いやぁ、マジで疲れたよ(笑)。

●福岡でのワンマンに行かせていただきましたが、メンバー皆さん消耗してましたねぇ。

そうね、福岡あたりはボロボロだったね(笑)。でもね、福岡もそうだったけど、久々の場所とか、初めての場所とかあったから、「来てくれてありがとう」ってたくさん言われるわけじゃん。それはやっぱりうれしいよね。同時に、また行かなきゃダメだなって思うし。

●フトシさんのバンド人生で、こんなに長いツアーは初めてでしたよね。

そうだね。過去最長だね。それでいいのかって話もあるけど(笑)。

●いえいえ、旅嫌いのフトシさんからしたら、すごいことですから。そして無事に完走できちゃいましたから。

そうそう、できちゃったね。あっという間だったね。ただ……俺は決して楽しくはなかったけど。

●ハハハハハ。

でもライブ自体は楽しかったからさ。行って良かったよね、全ヵ所。

●8月2日のツアー・ファイナル(下北沢SHELTER)はいかがでした?

もうね、その一体感たるや、すごかったよ。やっと観たかった景色が観れたんだよね。「夜虹」の大合唱とか、サビでみんながジャンプしてるのとか、「Sense of you」の感じとか。それはすごくうれしかったね。

●ツアーのドキュメンタリー映像がYoutubeにUPされていましたが、大阪club vijonはすごく良い盛り上がりだったみたいですね。

熱いよね。すごい上がるよね。そこで思ったんだけど、やっぱり全バンド違うよね。HATE HONEY(以下HATE)もBAD SiX BABiES(以下B6B)もvezもさ。お客さんの盛り上がり方はそれぞれあるよね。それはきっと曲が持つ何かなんだろうな。

●たしかに違います。そういう部分も面白いですよね。しかしvezはツアーが終わってひと段落かと思いきや、引き続きがっつりとライブ予定が入ってますね。

そうだね。なにせすでに新曲があったりするから。あと、ツアー中はずっと「(次は)なにを歌おうかな」ってことを考えてたりもしてて。今度のテーマはすごく曖昧なものなんだけど。だからこそ明確な柱を見つける必要があってさ。ずっと歌い続けていけるであろう芯の部分を見つけ出す作業をずっとやってたの。で、なんとなく見えてきて、もうそれには突入してるね。

●曖昧なテーマとは、言葉にするとどういうものになりそうですか?

“気にしない”って生き様かな。それはなんなのかって。自由・不自由って言葉を使っちゃうと、「自由なんてない」とか「不自由があるから自由だ」とかになるじゃん? そうじゃない本当の意味での“フリー”っていうのかな。在り方としての“フリー”。

●そういうことを歌いたくなったきっかけはあるんでしょうか?

なんかさ、他人のことを思いやって生きることはすごく大事なんだけど、そんなことよりなにより、「人にどう思われてるんだろう?」とか「人にどう見られるんだろう?」とか、そういうことに過剰な時代な気がしてさ。

●それはとてもよくわかります。

そう。だからそういうのを「ぶっ壊そうぜ!」って歌いたいんだよな。

●『Intuitionistic logic』がとても明確で固まったテーマの下に制作された作品だったから、次回作はそうしたテーマにしようと思ったんでしょうか?

いや、それはないね。『Intuitionistic logic』と『Array of planet』の2枚は、特別だからね。あの2枚は完全に独立したものとして残せてるから、新しいテーマとの結びつきはないよ。俺はもう次に行こうって思ってるから。むしろね、『Intuitionistic logic』の影響はソロにきてるね。

●それはたしかに、今回の2枚のアルバムに収録されている新曲たちを聴いても感じます。

それもだし、次にソロ・シングルで出す予定の新曲もそうなんだよね。自分たちで作ったものに影響されている感はあるよ。

●ではvezのほうは、その新しいテーマの下に生まれたものが12月のワンマン前後には聴けそうですね。

そうね。vezで感じたのは、ある程度4人の共通項がないとダメだっていうのは思い知ったよね。俺がテーマとした“直観主義論理”そのものも、俺だけが理解しててもダメだってことも感じたし。それも踏まえた次ができればいいね。まあ、反省はしないけどね(笑)。あくまで、踏まえて。音だけじゃなくて、意志的な部分も含めてよりもっと4人が強固になりたいというか。4人のコアな部分を探し出したいよね。


♭ [ flat ] # [ number ]



●では本題に入ります。6月28日に2枚のソロ・アルバム『♭ [ flat ]』と『# [ number ]』がリリースされました。これらは『lyrics』に続くニュー・アルバムという位置づけですよね。去年リリースされたアルバム『OUTSIDE SINGLES』は、フトシさんの“「OUTSIDE SINGLE」シリーズ”から1曲ずつをチョイスしたベスト盤でしたが。

あれもベストってわけでもないんだけどね。区切りではあるけど、『OUTSIDE SINGLES』に収録されている曲は、今回みたいに好き嫌いとかで選んでいるわけじゃないから。あっちは詩にこだわって選んでる。まさに“OUTSIDE”って言葉の意味に寄り添った作品だね。

●それはたしかに感じます。

そもそも“OUTSIDE”ってさ、いちばん最初の俺個人のサイトの名前なんだよ。そこから始まってるから。あのサイト自体、“HATEとは違う俺の側面”っていうことで始めてたからさ。そういう意味での“OUTSIDE”なんだよ。だからあのアルバムは、歌詞カードに載せてる詞が違うから。

●歌詞そのものではなく、その基となった詞を載せてますよね。

俺ってさ、あそこにあるとおり、すごい長い詞を書くんだよね。だからそれによってもっと俺の“OUTSIDE”がより伝わりやすくなるんであれば、それはいいなって思ったんだよね。で、他にそんなことをしている人も聞いたことないからさ。だから『OUTSIDE SINGLES』は、独立した作品だよね。

●では、今回の2枚は24曲というボリュームですが、新曲は3曲で、あとは過去の音源です。しかし、ベスト盤ではなく、新しいアルバムとして存在できている気がします。

うん。『lyrics』(1stアルバム)とも確実に違うしね。感覚的には、『lyrics』に続く2枚組の2ndアルバムだね。

●1stアルバム『lyrics』の後、フトシさん自身と、スタッフと、エンジニアの藤井さんで制作されてきたものの集大成という感じですよね。

そうだね。『lyrics』の後の6年間で出してきたシングルからの選曲だからね。で、本当は『lyrics』のときみたいに、アレンジし直して、ベースやドラムを足して2ndアルバムを1枚作るって案もあったんだよ。だけど、あの曲も良い、この曲も良いってなって、ぜんぜん選曲しきれなかったんだよね。かといって、2枚組をレコーディングし直すなんてことになると、圧倒的に時間がなくて。

●物理的に難しい話ですよね。

で、ふと思ったんだよね。この6年間さ、シングルのリリース・スパンが短すぎて、おざなりになっている部分がたくさんあるなって。人に伝えきってないというか……要は宣伝が足りてないっていうか。自分の中で、「これはすごく良いんだよ」っていう宣伝をあまりしてなかったっていうか。そう思ったから、それぞれの曲にもう一度スポット・ライトを当ててみたかったんだよ。さらに当てることで、「おぉ、この曲はこんな音で作ってるんだ!」とかって発見が、たくさんできると思ったんだよ。

●フトシさん自身も自分で振り返って聴いてみて、そう思えたということですね。

うん。今の時代さ、バンドマンはみんなアコースティックやってんじゃん。みんなアコギでディストーション踏んだりとか普通にやってんじゃん。でも当時からそんなことをやっていたのは俺しかいなかったって自負があるからさ。それを思うと、その曲たちをまとめて、ちゃんとみんなにもう一度聴いてもらえるように形にしたかったんだよね。で、そう思ってから選曲して、2枚に分けて、新曲を3曲入れてって感じだね。

●たしかにアルバムで聴くと、どの曲も今までとは全然違う聴こえ方がしてきました。

リマスタリングもしてるしね。しかも、藤井が新しい機材を導入しててさ。それも意外と反映されてるね。

●リリースされた時期はバラバラじゃないですか。それこそ6年もの時間の中で生まれた曲たちですから。でもちゃんと筋が通っているというか、同じ血が通っているという印象を受けました。

まったく同じ意識でやってきてるからね。考え方も、作り方もさ。あと毎回なんだけど、レコーディングしてて藤井は「これ以上音いらないんじゃないですか?」って言うんだよね。「これで十分曲になってますよ」みたいな。そういうのを信じてやってきた部分もあるし。

●どの曲も、必要最低限の音で構成されていますよね。

そう。単純にさ、音を詰め込んだらライブで弾き語りするときに影響でちゃうからね。「(音源と)ぜんぜん違うじゃん」って思われても嫌なので。そのギリギリのラインっていうのかな。ライブの弾き語りと、音源としての音楽、ギリギリの音楽のラインを、ずっと気をつけて作ってるね。

●あくまでもライブが基準なんですね。

正直ね、音源はもっと完成度の高い音楽を作ることも可能ではあるんだよ。だけどそれをやらないのは、やっぱりソロは“歌”がメインじゃん。“歌”があってナンボだから。その歌のものすごい細かい部分っていうかニュアンスが、音を詰め込むことによってどんどん消えていっちゃうから、それを消さないように、あくまで歌を中心にした音源を作るということは、ぶれずにやってきてるから。

●歌もそうですが、“高木フトシ”というひとつの音楽がこの2枚にはありますよね。

うん。あるなって思った。それ俺も自分で驚いちゃったんだけど(笑)。で、すげえなって思って。

●楽曲的にはすごく幅があるじゃないですか。でも、ちゃんとひとりのアーティストの作品として成立できてるなって。これってすごいことだと思うんですよね。この2枚を聴いて僕が浮かんだのは、The Smashing Pumpkinsの『メランコリーそして終りのない悲しみ』だったりします。

いやいや、そんなすごくないよ(笑)。あっちのほうが全然芸術的ですよ(笑)。

●ただそれくらいわかりやすく、高木フトシの音楽だと断言できるものが収録されたアルバムだなと。

誰も真似できないし、誰もがそう簡単にはできないことだろうね。なんかそれは言われたことあるけど、そうかもしれない。まあ、あくまで俺レベルでの話ね(笑)。世間的なレベルからしたら、だいぶ下のほうだけど。

●いやいやいやいや。

まあ、しょせんアートだから、上も下もないんだけどね。ランキングなんて関係ないじゃん。ただ、何十年もやりたいと思ってやってきているだけのことだから。

●とはいえ、アルバムからは“自信”を感じました。

そう。特に『♭ [ flat ]』ね。それは自信あるんだよな。なんか自信がついたんだよな。

●きっと最近ですよね、自信をのぞかせるようになったのって。

そうだね、去年…一昨年くらいからかな。なんか自信ついてきたんだよな。「あれ? 俺けっこうすごいことやってるんじゃない?」って(笑)。

●でもそれってとても大事なことですよね。正直、このスタイルでこれだけの期間やってきたということ自体、自信を持っていいことだと思いますし。

だろ? あとこの前さ、30 seconds to marsのジャレッド・レトが監督してるドキュメンタリー(『ARTIFACT』。当時彼らが所属していたレコード会社との訴訟問題を中心に描かれている)を観たんだけど、まあ面白くは観れるんだけど、俺にしてみれば内容は陳腐でしかないんだよね。「今かよ」って。まあ、何億なんて訴訟は今までもこれからも俺には経験ないだろうけど、業界に対していろんなアーティストが言っていることとか、俺B6Bの頃からさんざん言ってきたことだから。「今さらかよ」って思っちゃって。……何様だよ俺(笑)。

●ハハハハハ。でも、事実そうですからね。

だって陳腐じゃん、今さらCDが売れないとかさ。

●ちょっと前も、とあるアーティストが「CDを買ってください」なんて呼びかけてたりしましたね。

そうそう。「何言ってんの?」って(笑)。大人なんだから、とっくにわかってることだろってな。そもそも音楽なんて、儲かりたいと思ってやるもんじゃないし、俺だってそんな理由でやってないしさ。

●まずなにより聴いてくれる人たちがいてこそのものですからね。

そうだよ。そう! そんな人たちに買い方を求めるなんてナンセンスだよ。俺なんてさ、「お金がないなら友達にコピーしてもらっていいよ」とか、平気で言っちゃうからね(笑)。

●vezのインタビューのときもおっしゃってましたね。まあ、あのときは独断でカットさせていただきましたけど(笑)。

ハハハハハハハ。いやいや、今回は書いてよ! ぜんぜん焼いてもらって結構だよ(笑)。

●なにより聴いてもらうことが、音楽家にとって大切なことですよね。

それだけでいいよ。なにより聴いてもらって、「良い」って言ってもらえることがいちばんじゃん。まあ、金にはなんないんだけどさ……いや、そもそも金にはなんないんだよ、音楽って。音楽やって外車買おうとか言ってる奴がおかしいんだよ(笑)。

●この2枚のアルバムを持って、ソロ・ワンマンのツアー“-Red light / Green light- ”がありますね。

そう。ひさびさの大阪ワンマンもあるね。しかもポテキ(POTATO KID)で(笑)。

●久々ですよね。さらに名古屋もHUCK FINN FACTORYという。

そうそう。なんかね、良く言う“初心に帰る”じゃないんだけどさ。なんか……めぐり合わせだろうね。なんかそんな気がする。どうしてもそこでやりたいと思って決まった2カ所ではないので。

●たまたまそうなっただけなんですか?

そう。節目なんだろうね、きっと。でね、今のところこの2本はね、ライブはガット・ギター1本でやろうと思ってんだよね。全曲。もしかしたら、お客さん寝ちゃうかもしんないけど(笑)。

●気持ちよくなっちゃいそうですね(笑)。

もちろんガットでもシャウトするけどね。シャウトはするけど、ディストーションはないかな。

●そういう意味でも、特別な夜になりそうですね。

そうだね。なんかね、お客さんと会話しながらやりたいんだよな。そんな弾き語りライブがいいなって思ったんだよ。

●さっきもおっしゃっていた“歌”がメインとなるライブになると。そういえば最近ソロのライブで、観客のみなさんに「一緒に歌ってくれ」と言われたりしているみたいですね。

うん、「core」(『OUTSIDE SINGLE [core]』収録)とかね。良いよ、「core」の大合唱は良いよ。

●想像しただけでグッときますね。

あれはね、心から温かくなるよ。でもあの曲を作ったときは、「ゆこう 空へ」ってところをみんなで歌えるなんて、俺は思ってなかったからね。

●ですよね。なにより僕は、ソロで「一緒に歌おう」とフトシさんが言っていること自体に驚きました。

ああね。でも最近そういう空気があるんだよな。それはね、vezの影響もあると思う。一緒で良いと思うしね、ライブの在り方というか、パフォーマンスと呼ばれるようなものはさ。

●バンドでも弾き語りでも、変わりはないと。

うん。できればどの曲も一緒に歌ってほしいよ、本音は。それはすばらしくでかいことだと思ったりするから。まあ、さすがに「Death in the snowstorm」(『OUTSIDE SINGLE III』収録)を一緒に歌おうとは言えないけど(笑)。

●それは無理ですよね(笑)。あと、みんなで「黒のフレアー!」なんて叫ぶわけにもいきませんよね。

そうそうそうそう(笑)。攻撃的な詞のやつは無理かもしれないけど…。ていうか、8割は攻撃的な詞だけど(笑)。歌えるやつは、一緒に歌ってほしいね。もうさ、自分の中で境界を作ってないからさ。vezとソロしかやってないし。だから今はもっと共有したいんだよね、みんなと。

●ワンマンはやはりこの2枚からの曲が中心になりますよね。

そうだね。しばらくはこの2枚を中心にライブでやっていこうかなって思う。この曲たちで、やれるところまでやりたいね。もちろん新しいシングルも作っていくけどね。次はよりわかりやすい詞の作品にしたいから。できればね、2行で終わらせたい。

●そんなに短く、ですか?

それくらいの感覚でね。2行に集約される歌っていうのかな。それをずっと考えてて。2行くらいで良いと思うんだよね。人に何かを伝えようなんて言葉は。それ以上はうっとおしいじゃん。

●ずっと昔、「ライブなんか3曲くらいで十分だよ!」とも言ってましたね(笑)。

ホントだよ! 3曲で十分だよ!!

●これからワンマンツアーをやろうっていうのに(笑)

ハハハハハ。だって観てるほうもさ、その3曲がすげえ良かったら満足じゃない?
まあ、俺がお客さんだったらね。実際やったら、「金返せ!」って言われるだろうけど(笑)。

●ちなみに今、ソロのワンマンってどのくらいの時間歌っているんですか?

だいたい2時間半くらいかな。MCはやっと少なくなってきたけどね。昔はえらいしゃべってたけど。

●ひとりだと“間”が大変ですからね。今はなにより曲がたくさんありますからね。

だね。歌いたい曲がいっぱいあるよ。

●今回インタビューのためにフトシさんソロの歴史を改めて振り返りましたが、すごいですね。いやぁ……ホント働いてますよ。

ハハハハハハ! 働いてるよね、俺ね(笑)。でも、曲が降りてきちゃうもんはしょうがないんだよなぁ。そして、それを聴きたいと思ってくれる人がいて、ライブをやってほしいって誘ってくれるライブハウスがあって。だから、すごく幸せな状況じゃん、アーティストとして俺は今。さらにスタッフもいて、お前みたいな人たちもいてさ。俺はたぶんすごく幸せな環境にあると思うから、その中で俺のやるべきことは単純じゃん。より良い音楽を作って、より良いライブをやる。それでバランスを取るしかないからね、俺達。まあ、この回り方がいつまで続くかわからないけどね。やれるところまではやりたいし、いけるところまではいきたいよ。

●余談ですが、フトシさんが初めてソロ名義というか、“高木フトシproject”名義でライブをやったのが、10年前の8月(渋谷La.mamaにて。2004年8月31日)なんですよね。

そっかぁ……10年かぁ。あのときはたしかメンツは2代目vezなんだよな。

●そうですね。Mitsuさん(Jeannie Nitro)、石川さん(The BONEZ)、YANAさんでのライブでした。

10年かぁ……。YANAさんとは10年もやってんだ。

●YANAさんはHATE復活ライブ(2002年4月23日)のときにも叩いていただいてますからね。

そうだよね。長いねぇ。でも10年で…………たいしたことやってねえなぁ俺(笑)。

●いやいや、急にどうしたんですか(笑)。

振り返るとたいしたことやってねえなぁと思って。

●いえいえ、良い曲たくさん書いてるじゃないですか。

ハハハハハハ! そういってもらえると嬉しいっす(笑)。でも10年か……やべえ、俺なんもやってねえ(笑)。いやぁ、時間ねえわ!!
遅れを取り戻さないと。……なんの遅れかわかんないけど(笑)。

●いえいえ、そのためのこの2枚のアルバムですよ。

そうだ! そうそう(笑)。でね、このアルバムは何年もかけてオススメしていきたいよね。ちゃんとみんなに「良いアルバムです」って。それを本気で思えるんだよね。自分でもビックリしてるんだけど。だから、聴いてほしいね。いろんな人にさ。





★★★全曲解説『♭ [ flat ]』★★★

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「Days earlier」



●個人的にですが、この『♭ [ flat ]』にある曲たちは、どれも“終わり”を感じさせますよね。ただそれはネガティブなものだけではなく、ちゃんと希望がある気がします。

イエス! ある意味それがポップなんだよね、俺の中で。でも強いし、疑問もしっかり投げかけてるので。らしいかなって自分でも思うよね。

●アルバムは「Days earlier」で始まりますが、まさに自信がはっきりうかがえる曲ですよね。

そう。意外といちばん自信があるんだよな。で、いちばん聴き入ってほしいんだよなぁ。詞の内容もそうなんだけど。歌にはしてないんだけど、「この世界がどうなろうといいさ」の後に、「(君がいれば)」って一言を詞にあえて書いてるんだよね。

●この一言があるかないかで、受け取り方がぜんぜん変わりますよね。

うん。実はこの部分を歌っていた時期もあるんだけど、だんだん歌わなくなったんだよね。聴いてくれる人に委ねるのもいいかなって思って。「本当にどうでもいいのか?」って部分もあるじゃん。それを何日、何ヵ月、何年後になにを思うって話だから。それでも、「俺が涙をぬぐうから」って思いがあるから。その場にいればね。だから……ラブ・ソングだよね。

●たしかにそうですよね。フトシさんらしいラブ・ソングだと思います。

音がもうさ。後半に進むにつれて、どんどん渦巻いてくるんだよね。ヘッドホンで爆音で聴いてたら、ゾワッってしてくるんだよ。これだけ渦巻くものをよく録れたなって。それはね、藤井がすごいね。声とか、歌い方もね、自分で聴いててすげえなって思う。良い曲だよ。アコースティック版へヴィネスっていうのかな。へヴィなバンドにも対抗できるよね。だから俺、ぜんぜんできるよ、ソロでSlipknotと対バン(笑)。

●それはぜひ観たいですね(笑)。

この曲があればね。ぶっ潰してやるよ(笑)。そんな気にさせてくれる曲だね。

●たしかにリ・レコーディングする必要がないくらいに完成されていますよね。

無理だよね。録り直して、きれいに整頓することは可能なんだけど、あの渦巻いているものを再現できるかってなると、俺も藤井も「?」ってなるからね。



「Radio star」



「Radio star」はね。実は今は詞を付け足してて、ライブではそれを含めて歌ってんの。だからこそ録り直したかったんだけど。この曲ね、俺の曲の中でもかなり音が良いのよ。

●はい、とてもクールに録音されていますよね。

そう。ベスト3に入るくらい音と空気感が、めちゃくちゃ好きでさ。で、ベースやシェイカーも俺が弾いてたりして。あとカンカン鳴ってるやつとか、ホームセンターで買ってきた木とハンマーでやってるんだけど(笑)。

●D.I.Y.ですねぇ(笑)。

余談だけど、「Radio star」が収録されている『OUTSIDE SINGLE 4』はね、レコーディングにギターもなにも持っていかずに行ったの。あと『OUTSIDE SINGLE U』もそうだったか。頭にある曲だけ持って、手ぶらで藤井のとこにいって、そこにある楽器を借りてレコーディングしてるんだよね。だから弦も代えずにやってるからさ。腐ってる状態のやつをそのまま使って(笑)。

●放置してあった機材で(笑)。

そうそう、なんのメンテもされてないやつね。で、それで録ってあの音だから、再現するなんて難しいじゃん。

●あぁ。それはもう魔法がかかっちゃってますよね。あと、詞に込められたメッセージも強いですよね。

そう。詞はメディアに対する歌なんだよ。最近だと小保方さんのこととか。あと、ロビン・ウィリアムスが亡くなったじゃない。彼が出てた『フィッシャー・キング』って映画があって、たぶんあの影響もあるんだよね。ジェフ・ブリッジスが演じてたDJの生き様っていうのかな。その影響はあるよね。

●この曲がリリースされたのは2009年ですが、今のほうがビッタリとハマってますよね。

うん。ネット内でもそうだけど、スターになりたがってる人が多い気がしてさ。他人を批評したりして、その批評している自分を褒めてほしいわけでしょ。それは俺にはよくわからなくて。

●しかもそういう人たちが語ったことを聞いて、音楽を知っちゃった気分になる人たちもいますから。

まあ、そういうのは飽和しちゃってるからね。ラジオそのものも、地方ラジオとかが全国で聴ける時代だからさ。ただその分散していった先でもさ、人はなにかを求めるから。だから「Radio star」の最後にさ、「孤独だと言う君へ」って言い放ってんだけど。心の中では「いつまでも言ってろよ」って思ってんだけどね。でも付け足した詞にはさ、それでしか生きられない人もいるんだよって言葉をライブのときは足して歌ってる。4行ほど。

●おお、それはけっこう足してるんですね。

うん、サビ1個分だね。

●それはライブでのお楽しみということですね。

あと思い出したんだけど、仙台のライブでたっつん(ex.N.E.Sの瀬野尾達哉)が叩いてくれたことがあってさ。それは本当にレコーディングしたくなるくらい良かったんだよね。そういうのも、いつかやってみたいかな。この「Radio star」がもっとみんなに根づいたら、きっとそういう次もあると思う。まずなにより、曲としてすげえ良い曲だと思うからさ。たださ……ギター超むずかしんだけどね。

●ハハハ。たしかに大変そうですよね。

途中でわけわかんなくなるんだよね。中指が尋常じゃない動きをするからね(笑)。

●着の身着のままでスタジオに入っちゃったツケが(笑)。

だけど、頭の中にはもうこの音が鳴っちゃってるから、やるしかないじゃん。元々ギタリストだったら良かったんだろうけどね。だからいっつもそれとは対決してるよね。「できねえ……でもやるしかねえ!」ってなるよ。だいたい頭の中で鳴ってるピアノの音とかを、ギターでやろうとするのが間違いなんだよね。vezの「Rain」のイントロとかね(笑)。

●あれもそうですね。ライブで大変そうです(笑)。

意外と練習してるからね。トチっちゃうからね(笑)。



「黒のフレア」



●「黒のフレア」は以前のインタビューで、細かく話していただいた曲ではありますが。

そうだね。良い歌だよね。自分で言っちゃうけど(笑)。ただ、「黒のフレア」は歌う上でパワーが必要でさ。ちょっと前までライブで弦が切れるポイントだったんだよ。そんな時期があったくらい、力が入っちゃうんだよ。

●サビがまた強烈ですよね。

そう、力が入っちゃう。で、俺の中であれはすごくNIRVANAチックでさ。さらに言うと、HATEの『Hell's kitchen』でもあるから。

●ああ、なるほど。わかりますね。

尋常じゃない歌い方のところとか、今聴くと恥ずかしいんだけど、でも振り切ってるからいいのかなって思って。そしてその振り切れている感じも、もう一回やるってなるとさ……かっこつけちゃうんだよね、絶対。うまく歌おうとしちゃう気がするからさ。そうすると、もうあの空気は録れないからね。

●それも『Hell’s kitchen』と一緒ですよね。

うん、まったくそのとおりだね。そもそも録り直しの作業って俺としてはダメなんだよ。だからもう全曲新曲のアルバムを作るしかないよね。あ、でも『lyrics』はうまくいったんだよなぁ。

●では、友人のアーティストさんを集めて、ゲスト・アルバムみたいなものを作ってもいいんじゃないですか?

ああ、良いかもね。たしかにそれもアイデアとしてあったわ。ただ……すごいゲストになっちゃうじゃん?それだと俺の力じゃなくなっちゃうよね。

●ハハハハハ。たしかに。

確実にみんな俺より有名人だしさ。それだったらさ……vezでいいじゃん(笑)。メンバーでより良いものを作ったほうがいいよね。



「Voice of you」



●「Voice of you」は新曲ですよね。

これはもうね……ギターが超むずかしくてさ。

●大変でしょうねぇ(笑)。このダークな空気感も含めて。

最近になってやっとガット・ギターがわかってきたんだよね。だからフラメンコ調とまでは言わないんだけど、16ビートのカッティングで作ってみたんだよ。で、英語の歌詞にしたいなと思ったんだよね。

●たしかに英詞がハマってますよね。緊張感もありますし。

あるね。最初から最後まで止まれないからね。だからこそ、これはモノにしたらカッコイイかなって。で、やっとライブでも掴みかけてるかな。

●歌詞も翻訳していくと、かなりパンチがありますよね。特にCメロにある「Be killed in a whim God」って言葉は強烈です。

はいはい。良くないよね、それ(笑)。でも、英語だから言えるのもあるし。“赤と黒”ってイメージなんだよね「Voice of you」は。その色合いは、実は自分の声の質感でも気をつけてる部分でもあるし。

●たしかにこの曲にピッタリのカラーですね。

そもそも“血がたぎる”って言葉から連想したんだよね。この声があるからだけど。でもその声が聴こえなくても、同じ血が流れていれば共有はできるじゃん。そのコミュニケーションの在り方を言いたかった。血の熱さがまだ冷めないって。その血と血で、俺達は混ざれないの?って。

●“混ざれない現実”という言葉が詞にありますね。

そう。それを書きたかったね。だいぶフックになってるよね、『♭ [ flat ]』の。この位置でさ。



「Time of Dream」



●そんな「Voice of you」の次がポップな「Time of Dream」というのも面白いですね。

これはね、実はめちゃめちゃ大変だったの。この曲のバックで鳴ってるシンセみたいな音あるじゃん。「ハーーー」っていう。これ実は全部俺の声なの。

●え、そうだったんですか?てっきり女性の声かと。

俺の声だよ。ハモをめっちゃめちゃ入れたんだよ。藤井に「とにかく俺の声を重ねていくから、全部録っちゃって」って伝えて。それでいろんな高さで「ハーーー」って。それを重ねて貼ってるんだよね。Enyaかってね(笑)。

●ハハハハハハ。でもそのアイデアが曲にすごく活きてますね。

そう。さらに、後にgonvutの「little the universe」とかでも活きたりしてるしね。でね、「Voice of you」を作ってるときに、「Time of Dream」も同じような感覚で作ったなって思い出したんだよね。英語で歌いたいってこともそうだし、サビであえて突き抜けてない感じとかさ。その方法論って、実は俺は好きでさ。自分が音楽を聴くうえでも。サビが落ちきらないラインでずっといってる感じが好きなんだよね。

●サビが盛り上がるわけでもなく、淡々と進んでいきますよね。

そうだね。だから「Time of Dream」は趣味的な部分もすごくあるかもしれないね。

●きれいな曲ですけど、意外と詞の内容はシビアですよね。

そうね。でも「Time of Dream」って言葉はリアルじゃん。夢をなにと捉えるかにもよるけど。夢は人それぞれだからね。自分にとってはものすごい孤独感があって、それを表現したかったのかなって思うよね。



「ROSEMARY」



「ROSEMARY」はね、タイトルどおり。まずファンからローズマリーの植木をもらったんだよね。で、そこからバンと降りてきて、あっさりできちゃったんだよね。

●この曲のレコーディングも、着の身着のままで録られてるんですよね。

そう。ホームセンターで買ってきたものでパーカッションやったりね(笑)。元々藤井の家にあるパーカッションも使ってるけど。俺さ、「ROSEMARY」や「Radio star」の流れ、好きなんだよね。なんかさ、メキシコ的な空気があるじゃん。

●たしかにありますね。

メキシコなんて、そもそも行ったこともないんだけどさ。でもきっと好きなんだろうね、俺。

●そうですね。他の曲にも、メキシコを感じさせる空気感のものはありますよね。

いまだにCalexico(アメリカのバンド。メキシコなどの民族音楽を取り入れたサウンドを聴かせてくれる)とか好きで聴いてるからね。だからそのへんの影響がほんの少しだけ垣間見えるよね。

●ちなみに「ROSEMARY」の花言葉が“記憶”だったりします。

へぇ、そうなんだ。それはなんか…合うね。合ってんじゃないですか(笑)。

●調べてみて、ちょっと「おぉ!」って思いました。曲にもそうですし、このアルバムに入っているということにも合ってるかなって。

そうだね。まあ、あんまりライブでやんないんだけどね(笑)。音源はすごい好きだよ。



「夏の影を」



これはね。もうレコーディングで異常に悩んだんだよ。(音を)入れ出したら止まんなくてさ。特にサビとかリズムあったほうが絶対いいだろうなとか。でも、なんかそうするとBメロがさびしくなるし、当たり前になるから。実はBメロがいちばん伝えたいことだからさ。ぶっちゃけBメロだけ聴いて感じてくれればいいんだよね(笑)。

●それくらいここに集約されているんですね。

そう。なんかね、この曲は詞が好きなんだよ。飾ってない気がするんだよ。ちゃんと日本語としてね。

●メロディも言葉もとてもなめらかで、自然と入ってくる感じがします。

うん。ただ歌うのは大変なんだけど(笑)。この曲と「帰る場所」(『lyrics』収録)はニュアンス的には似てるのかなって思う。「帰る場所」はもっと明確ではあるけど。

●似た空気を持っていますよね。そう言われると、より詞が鮮明になります。

「夏の影を」ってタイトルをイメージしながら聴いてほしいね。しつこいようだけど、Bメロに集約されているからさ。



「the life is beautiful」



●「the life is beautiful」と「夏の影を」はつながってますよね。

そうね。まさに。これを作ったときにさ、なにかあったんだよな。……忘れちゃったけど。忘れちゃうくらいのことだったんだけどね。

●なにかしらきっかけがあったんですね。

そう。で、詞にある「ここにいていいと 君は言う」ってことを、とにかく言いたかったの。存在理由っていうのかな。たまに自分の存在理由とかって考えたりする瞬間ってあるじゃん。そういうときに、誰かの「ここにいてもいいよ」っていう一言でさ、ものすごく空気が変わる瞬間ってあるじゃん。

●救われる言葉ですよね。

それこそが人生の幸せのような気がするんだよね。なんかね、そんなことを何気なく言われたんだよね。だから……飛べないけどさ、人生なんて。でもそう言ってくれる人とたくさん出会ったり連れ添ったりすることこそが、大切だと思うんだよね。

●サビも心地良いですよね。本当に羽ばたいていけるような気持ちになります。

うん。ライブでは笑顔満載だよ。これもいずれみんな一緒に歌ってくれたらいいよね。



「Dead dancer」



まあ、「Dead dancer」は得意のやつだよね。単純に3コードでさ、レゲエチックな曲が作りたかったんだよね。で、曲作りを始めたんだよ。

●さらにいうと、仕上がりはダブ寄りですよね。

ハハハ。今になるとちょっと恥ずかしいんだけど、俺ダブ好きじゃん。HATEの頃から。だからそういう感じのやつを作りたかった。詞はたいして意味はないかな。あと、「赤く濁る水」(『RADIO 16.5135HZ TRACKS』収録)と並べてやりたいなって思って書いたんだよね。だから、意味あるようでないような言葉の羅列を並べただけなんだよね。

●これもメキシコ・テイストがありますよね。個人的には、メキシコの死者の日の祭りを思い浮かべました。

ああ、それはあるね。どこかで死者の日の写真とかを見てて、その感覚はあった。それが「委ねられるままに舞う」ってところだよね。あとね、アルバムには入ってないけど、「Ruellia 〜ルエリア〜」(『the life is beautiful』収録)とつながっていたりもするね。

●そういうつながりを感じながら聴くのも楽しいですよね。

だね。そういえばYANAさんのドラムで「Dead dancer」やったことあるんだけど、超気持ちいいよ。

●それは良さそうですね。YANAさん、こういうビートは得意そうですし。

そうそう。「Dolphin」とかね。YANAさんのレゲエ意外と良いんだよなぁ。

●そういえば、YANAさんとふたりでやっているAKUHは最近ライブやってませんよね。

そうだね。でもまあ、今はvezがあるからね。だから今はそれでいいかなって。まあ、また機会があればね。



「DEVIL INSIDE」



●そして「DEVIL INSIDE」ですが。ソロでは珍しいほどのロックンロールですよね。

ハハハハ。意外と俺の中では恥ずかしいんだけどね。HATEの頃からやってたことだからさ。なんだけど、曲として降りてきたから、これは作って歌ってみようって。すごい覚悟を持って作った記憶はあるよ。自分ひとりでロックンロールってどうなんだろうとも思ったからさ。音もちゃちいし。歌う上でも、バックの支えがないからさ。

●しかし、見事にできています。歌詞もタイトルどおり、ストレートですよね。

自分の中の悪い部分と、そうじゃない部分の歌だね。でも、悪い部分って言ったって、それもまた当たり前の俺じゃん。良い俺ばっかなわけないから。だからそれを自分に言い聞かせたかった。俺の中にも悪魔はいるって。「だから何?」って(笑)。

●その感覚もロックンロールですよね。

うん。というか、ぶっちゃけ単純にこれ、INXSの「Devil inside」なんだけどね(笑)。

●ああ、なるほど(笑)。

あの曲が異常に好きでさ。いや、だからってパクってませんよ?(笑)

●わかってますよ(笑)。ぜんぜん違う曲ですから。

そう。でも、まさにアレだと思う。言っちゃっていいと思う(笑)。好きなんだよ、INXS。でもマイケル・ハッチェンス(INXSのボーカリスト。1997年に自殺)がいないINXSもINXSになってるよね。あれはすごいと思う。ALICE IN CHAINSもね。

●レイン・ステイリー(ALICE IN CHAINSのボーカリスト。2002年に死去)がいなくても、成立してますよね。

音源だけはね。だからこそ、マイケル・ハッチェンスもレインもマン・パワーがすごいよね。いわゆるボーカリストとしての。

●今はなかなかいませんからね、ああいう人たち。

でも両方ともドラッグで逝っちゃったんだよな……。



「折れた翼」



●「折れた翼」はアルバムの中でも……というか、フトシさんの中でも珍しい部類の曲ですよね。

これはZAKKYが書いてくれたライナーノーツにもあるけど、20歳くらいのときに作った曲なんだよ。一度だけ俺にもメジャー・デビューみたいな話があってさ、そのときのデモテープ作りで、良い曲だと言われてた何曲かのひとつなんだよね。そういえばこの前さ、その頃俺を担当してくれてたスタッフと会って呑んだんだけど、「折れた翼」をやってるってことを伝えたりしたんだよね。これはね、今聴いても良い曲だっていう認識があってさ。まあ、俺からしたら当然気持ち悪いんだけど。

●そのエピソードからしたら、それはそうですよね(笑)。フトシさんらしい曲とは言えませんし。

そうそう。でもね、これを作ったときに嘘はついてないから。伝わるんだよね、人には。「Death in the snowstorm」なんかより、ぜんぜん伝わるんだよ。だけど俺が今これを歌えるのは、「Death in the snowstorm」とかがあるからなんだよ。どんなに歳をとっても、そうあってほしいって思いが変わってない自分は褒めたいじゃん。そして、みんなにもそうあってほしいじゃん。そういう意味で、この曲はだいぶ価値があるよね。この曲と「Burny」(『lyrics』収録)は別格の価値があるよね。



「hallelujah」



●そして『♭ [ flat ]』を締めくくるのは「hallelujah」です。

これはなにげにいちばん語りたかったんだよね。まさに最近さ、全国の統計で、所在不明の子供が1500人以上いるってニュース(産経新聞が行なった全国の自治体調査による統計)があったじゃん。それってさ、そんな子供が1500人以上いるってことは、3000人以上の親がいるわけじゃん。その3000人は届け出を出してなかったんでしょ。つまり、いなくても平気だったってことで。まあ、それぞれの事情はあるかもしれないし、すごい探してた人もいるかもしれないけどさ。数字に出てるのはそういう現実じゃん。そもそも「帰る場所」を作ったときも、とある親が子供ふたりを殺してってニュースを観たからってのもあるしさ。で、「帰る場所」は子供側に立った曲じゃん。

●詞の内容はまさにそうですよね。

でも何年か歌っていくうちに、自分に子供がいないのに、「どの面下げて歌ってんだよ」って思ってさ。だから、親側の気持ちも考えてみたんだよね。まあ、親でもないんだけど俺。けど、それを歌わずにはいれなかったんだよね。だから、「帰る場所」のアンサーとして「hallelujah」はあるんだよね。俺の勝手だけど、そうあってほしいんだよね。

●サビにある「救われたい思いを 抱き続けてほしい」ですよね。

うん。すごい……謝りの歌でもあるから。上から目線でいた自分に対する謝りの歌でもあるし。でさ、近い人が亡くなっていくのをさ、もう46歳だからある程度経験しているじゃん。その中での思いも込めたかった。

●タイトルを「hallelujah」としたのは、すごく勇気のあることだと思います。

無宗教だからね、俺。でも、今年はやってないけど、何年か教会(日本福音ルーテル東京教会でのチャリティ・ライブ)でライブをやってきてたからさ。それもあるから、いいのかなって。でさ、その「hallelujah」って言葉の重みがあそこで歌うことで、わかってきたんだよね。体感的に。教会の天井を見ながら歌うと、わかるんだよ。「なに言ってんの?」って感じかもしれないけど(笑)。

●だからこそ、「hallelujah」という言葉を歌いたかったんですよね。

だね。「hallelujah」はね……重い。けど、内容は「帰る場所」と同じ意味なので。伝わると嬉しいよ。

●vezの初ワンマン(2012年9月27日)にお邪魔したとき、初めて関野さん(日本福音ルーテル東京教会牧師)とお会いして、少しお話をさせていただいたんですが、この「hallelujah」のことをすごく良いと言われてたんですよね。

ハハハ。セッキーのお墨付きが出たということは、良いってことだからね、たぶんね。たしかに直接ほめられたよ。それはすごくうれしかった。ただあいつは……普通の神父じゃないからね。

●たしかにそうですよね(笑)。牧師ROCKSの方ですから。

でもそこが良いよね、セッキーは。だから俺は話せるし、こうして付き合いがあるわけだから。どこまでいけるかわからないし、ちいさいものかもしれないけど、少しでもピースが広がっていればいいじゃん。そんなに嬉しいことはないよ。歌うたいとして。

●教会ライブは、今年はvezのツアーもあったからできなかったんですかね。

まあ、そうかな。スケジュール埋まってたからね。単純にセッキーから連絡なかったんだけどね。

●あ、そうなんですね。それはこちらから催促するものではありませんからね。

そうそう。とか言って、このインタビューが出たら、すぐ電話かかってくる気がするけどね(笑)。





★★★全曲解説『# [ number ]』★★★

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「No regret」



●『# [ number ]』は『♭ [ flat ]』とまたテーマが違いますよね。フトシさんの内側というか、感情の揺れみたいなものが込められた曲が多いなと思いました。

まさに1曲目の「No regret」の冒頭で、「言葉にすらしない」と言ってるからね。その思いから始まってるんだよね。言葉にできないものがあるから、シャウトしてるんだよね。それをまとめたかった。「No regret」から「EisWein Song」までをつなげたかったんだよね。最後の「太陽の花」は別として。

●「No regret」は新曲ですが、「Voice of you」同様にへヴィで緊張感のある曲ですよね。

「No regret」はね……迷ったんだよね。vezでやるか。

●たしかに、テーマ的にもvezに近い気はします。

そう。で、バンド・サウンドでやったらすごくカッコイイんだろうけどさ。ただ……MUSEっぽいかなって思って。

●ああ、言われたら、たしかに浮かびますね。

そうそう。頭の中に鳴る音の感じとかもね。だからこれはソロだなって。この曲は「the life is beautiful」につながってて。飛べないことをわかった上で、どこに行くって。あとvezからの影響もあるね。詞に在る「数字の羅列に 意味深なマーカー」ってまさに俺がやってたことで。

●冬に半纏を着てやってたことですよね(笑)。

そうそう(笑)。で、「この先俺どうすんの?」って思ってたりして(笑)。でも、らしいよね。

●このアルバムの始まりとして、とてもわかりやすいですよね。

タイトルの『# [ number ]』につながるしね。まさに数字の羅列で。実はアルバム・タイトルは♯(シャープ)でもあるんだよ。♯(シャープ)と#(ナンバー)は厳密には違う記号なんだけどね。でも、かけてはいる。それは聴いて感じてもらえればね。



「second eyes」



●「Second eyes」も自信があるのがわかる曲ですね。「これが聴きたいんだろ!」って意志も感じさせます。

「Days earlier」、「Seconds eyes」、「Radio star」はそうだね。完璧だよね(笑)。

●ですね(笑)。

なんかさ、“第三の目”とか言うじゃん、それの歌なんだけどさ。ないと思うけどね、そんなの。2つの目で見たものがすべてだとは思うけど。要は昨日までの時間をどう解釈するかでしょ。人は。それを、目を閉じてまぶたの奥に持ってるわけじゃん。それで観てるだけじゃん。そこにある過去が、“第三の目”としてあるだけって。だからそこにあるものは当然人によって全然ちがくて。

●もちろんそうですよね。

だから“第三の目”って言っちゃうと、良いものが見えるとか、感じ取れるとかって気がするよね。でも、そうではないんだよ。そんなものに頼って生きてらんないよ。だったら、光なんて最初からさえぎっていたほうがいいよって。そういう思いだね。ていうか、俺はそう思うってだけなんだけど。

●曲もテーマにハマって、非常にカッコイイです。

ギターのリフもカッコイイよね。まあ、若干むずかしいんだけど(笑)。

●カッコイイ曲は、だいたいむずかしいですね(笑)。

自分でも、押さえ方から探すからね。コードブックとか見ても、俺のやり方なんて載ってねえからさ。まあでも昔からだけどね。HATE の「IN THE SUN OF LOVE」も「chair」もそうだったし(笑)。



「ふたつの月へ」



これはね、頭のリズムは俺がパーカッション叩いてんだけど。藤井のとこにさ、なんか手作りのパーカッションみたいなやつがあったんだよ。すげえちゃちいんだけど。それを青タンできるくらい叩いたんだよ(笑)。

●あらら(笑)。でもそういうの見つけちゃうと、フトシさんは使いたくなっちゃいますよね。

そうなんだよ。だからアルバムのマスタリングのとき、藤井と思い出して笑っちゃったよね。「そんなことありましたねー!」って(笑)。

●そんなエピソードとは違い、とても深い悲しみを感じる曲ですよね。

詞はね、実はお袋が死んだときの話だったりするんだよね。

●ああ、そういうことだったんですね。

ある朝に、兄貴からお袋が入院したって電話があってさ。でもそのとき兄貴は「たぶんたいしたことないんじゃないかな」って言ってて。「またなにかあったら連絡するわ」ってくらいで。で、その日ってちょうど「僕の目は死に痛みを感じない」(HATEのシングル)のゲネプロだったかをやってたときで、渋谷で敦と有松とプリプロやってたのよ。で、その時にふたりにお袋が入院したって話をしたら、怒られてさ。「帰ってやれよ!」って言われたから、リハスタから渋谷駅行って、電車待ってたの。そしたら兄貴から電話かかってきて、お袋が死んだって言われてさ。そのときは全然意味がわからなくてさ。そのときの記憶っていうのかな。その歌だよね。こう言っちゃうとものすごく重いからアレだけど。もう作ってから何年も経ってるから、話そうかなって。

●サビの詞は、まさにそのときの思いですね。

本当に渋谷駅のホームで愕然としたからね。で、俺は病院にはいないからさ。だからといって、朝から行ってれば良かったってのもないからさ。その無力感っていうか……そういう歌です。……ぶっちゃけてしまった(笑)。

●ちなみにこの曲と「ROSEMARY」が、収録曲ではいちばん古い曲になります。2008年の「outside single U」に収録されている2曲ですね。6年前の曲になるんですが、こうして新しい曲たちと並べても違和感がありませんよね。

だね。実は曲のキーは今ライブで歌ってるほうが高いんだよね。だからこれもレコーディングしたときの歌い方をもう一度やろうと思ってもできないの。俺の感覚としては、このとき録ったものが100%で。これ以上ないんだよな。声の質感とか。もう一回みんなに聴いてほしいんだよ。より映像がはっきりするような気がするから。

●曲のキーを変えてるんですね。たしかに、フトシさん声高くなっている気がします。

そう。俺もうvezで歌い方が変わってるじゃん。それはさすがに伝わってると思うんだけど。俺さ、キーが上がってんのよ。

●上へ上へと(笑)。

うん。ただ……後悔してるけどね(笑)。

●際限なくなっちゃいますよね。

際限なくなるわ、夜は酒呑めなくなるわ……。悲惨よ、ボーカリストとして挑戦し続けるのって。ツアーなんてより楽しくないよ、

●維持していくのも大変ですよね。

そうそう。体だってめちゃめちゃつらいしさぁ…。でもそうしないと、つまんないんだよな。そうでもしないと、自分のプライドが保てないよ。“他とは違う”ってだけじゃダメなんだけど、“他とは違う”ってちゃんとした意味のあるものを持っていないと、人前で歌なんて歌えないよ。



「憎むべき自分の声と」



そもそも俺は、ずっとNIRVANA的なことがやりたかったんだよ。でも、渦巻いたネガティブさを言うのは簡単なんだけど、結局はそう思いこんでしまう自分のせいだったりもするじゃん。そう思ったから、それを自分の中から卒業したかったっていうのかな。

●この曲では、あえてそこから離れてみたんですね。

だから「オリジナルなものは声しかない」と言いつつも、正直こんな声どうでもいいって思ってる俺もいるっていうか。今時どうにでもなるじゃん、声ってさ。ボカロとかもそうだし。あと声の持つ力が、暗示に変わることもあるじゃん。それが嫌でさ。

●暗示……ですか。

恋愛とかもそうでさ。相手を好きにさせるために、耳元でささやいたりさ(笑)。それも声じゃん。女の子はより低い声が好きだとか、高い声が気分をリラックスさせるとか、世間で言われてることがあるじゃん。そういう科学的な情報も、俺はすごく怖くてさ。そのへんの思いっていうのかな。人を暗示にかけない歌を作りたいって思ったんだよ。それがこの曲だね。

●この曲は『outside single 0』に収録されていますが、シリーズ最後のシングルにこの曲が収録されているのは、すごく意味がありますよね。

うん。まさしく。『outside single 0』に入れたのは、さっきも言った卒業って意味合いがあるね。別にNIRVANAを聴かないとか、カート・コバーンから離れるとかそういうわけじゃなくてね。



「君の為に」



HATEに「I LOVE YOU」って曲があるじゃん。アレと意味は一緒。「愛してるって言えばいいんだろ」って。最低な俺が出ちゃった曲(笑)。

●ハハハハハ。

「はいはい、君の為にがんばりますよ」みたいな。「わかったわかった」って。……そういう歌(笑)。ハハハハハ。聴きたくねぇ〜、そんな歌(笑)。

●要するに、皮肉ということですね(笑)。

ついさっきNIRVANA的なものから卒業しようと言ったばっかりなのにな(笑)。だけど、この曲はギターのフレーズとコード進行がそうさせたんだよなぁ。「君の為に」は、1番の歌詞はやっぱ政治家とか学校の先生とかに向けててさ。

●なるほど。そこですか。

もちろん良い人もいっぱいいるんだろうけど、そうじゃない意味で“誰々のために”って言葉を使う人がいるじゃん。それに対して歌ったんだよね。「君の為にがんばります」じゃねえよ、「お願いします」って言えよってさ。「汚ねえなお前ら」っていう。だからまさに「I LOVE YOU」と一緒。HATEな歌だね。



「Butterfly blue」



●そしてポップな「Butterfly blue」ですが。

そうそう、この流れで急にポップにさせるっていう(笑)。「嘘だろ?」って思われるかもしれないけど、車の中で聴いてたときに、正解だったと思ったんだよ。この位置にこの曲があるのは。

●意外にも、自然に流れていきますよね。

「Butterfly blue」はね、昔綾瀬に住んでたときに、中学生か高校生くらいの女の子がさ、家の前の遊歩道に置いてある花の周りの飛んでた蝶を片っぱしからぶっ叩いてたんだよ。その絵がいまだに頭に残っててさ。「あの子、なんなんだろう?」って。そこから曲を書いたんだよね。

●たしかに、ショッキングな絵ですね。

人間的な本能でいえばさ、虫を殺すこととか、当たり前じゃん。珍しいことでもないし、実際俺らは肉を食べてたりするしさ。そう考えたらたいしたことじゃないのかもしれないけど。ただ、それを観たときには嫌な思いをしたんだよ。だけど、責められるものでもないじゃん。だったら、いわゆる優しさとか思いやりとかって感情とか感性って、どこからくるものなのかなって。それが「Butterfly blue」だね。

●その優しさや思いやりが曲からも感じられます。

あるようでないし、ないようであるのかもしれないけど……結局はないんだよね。だけど、曲として表現することでなんとなく形にはなるからさ。そんなエピソードをさ、笑って歌いたいこともあるじゃん。

●それが音楽の強みだったりしますからね。

そうそう。まさに。あとこの曲はね、gonvutの影響もだいぶある。やっぱ(ゴンダ)タケシに出会えたのは本当にデカいよ。世の中そんなに捨てたもんじゃないよって、教えられた部分は多々あるよ。無邪気だからさ、アイツ。無邪気ゆえに人に迷惑かけることもあるけど(笑)。でも、無邪気ほど強いものはないよね。



「,,,for green water」



●この曲も以前のインタビューで話していただきました。基となっているのは映画『グリーン・フィンガーズ』でしたよね。

まさしくそう、それです。それと、「Butterfly blue」とつなげることで、花に寄っていく蝶の在り方と、花の在り方を、並べて置きたかったんだよね。俺ら人間も一緒だからさ。

●花と蝶というのもありますが、青と緑というのもつながってますよね。

そうだね。あと、アルバムとして聴いててずっと重いのもどうかと思うから。この曲があるからこそ、わかりやすく救われる部分もあるだろうし。

●フトシさんは以前から「音楽はもう詞と声しかオリジナルのものはできない」とおっしゃってましたが、アルバムを通して聴いていて思ったのは、以前よりもずっとメロディアスにされていますよね。この「,,,for green water」もそうですし。

ああ、そうかな?

●そう思うんですよね。このアルバムにある曲たちが制作された6年間って、その前よりも聴きやすいメロディを意識しながら曲を作っているんじゃないかなと感じるんですよね。

えっとね……正解(笑)!! 多少の意識はあるよ。ただ、それでもまだ逃げてはいるんだけどね。本当にはっきりとしたメロディからは。俺はThe Beatles至上主義ではないので。逃げてはいるよ。やっぱりジャズが好きだからさ。ジャズなんかまさしく人が気持ち良いと思うラインから逃げることで、あのメロディができるんだよね。

●そこから生まれる心地良さもありますよね。

究極のクールだからね。まだそこに辿り着いてない自分が情けなくもあるけど(笑)。



「star fall」



これはもうね……良い曲だ!!

●良い曲ですね(笑)。

名曲だよな。自分で言うのもなんだけど。これはね、3.11の地震で津波の被害があった場所へ行って聴きたいっていうか。俺がね。

●この曲が収録された『outside single [seven]』をリリースされたのも3.11直後ですよね。

うん。『outside single [seven]』はまさにそうでさ。影響というか、あのことを踏まえてのものだよね。で、「star fall」は特にそうで。福島の原発がある場所でもいいけどさ。まさにこの歌のとおりになるはずだし。そう思いたいというか。

●歌詞の最後にある「見守ろう」はとても重く響きますよね。

歌っててもそうだよ。息切れしてるからさ。ただ、その一言に集約したかったんだよね。それくらいしかないっていうか。でもその景色はきれいじゃん。その場所がどんなに汚染されててもさ。

●見えるものの美しさは変わりません。

そこから見る星空はすごくきれいなはずで。それは誰にも奪えない。だから……今もそこに人が住んでる気がする。なんか、そういう確信があったんだよな。ならば、「星を降らせよう」って。そういう歌だね。



「綴音」



●こちらも新曲ですね。まずタイトルはなんと読めばいいんでしょうか? 歌われているのは、“つづれおん”と聴こえますが。

“つづれおと”だね。まあ、“つづれおん”って歌ってるから、それでもいいけど。これは俺が作ってる“音シリーズ”の最新作だね。

●テーマとしては、vezの「杼」とつながってますよね?

やっぱりバレる?(笑) そう、完全に「杼」からきてる。アレンジは本当にさんざん迷ったんだけど、ガット1本で弾き語っちゃったほうがいいかなぁって思って。とりあえず1回弾いてみたの。そしたらやっぱ詞の世界観はこの音で成功したんだよね。

●“音シリーズ”らしい、シンプルな仕上がりですよね。

“音シリーズ”は俺にとって、「outside single」よりさらに“OUTSIDE”なので。これからも多分出てくるとは思うんだけど。

● “綴”という言葉を選んだ理由はあるんですか?

ああ、もう完全に志村(ふくみ)さんから影響されてると思う(笑)。日本語の美しさというか……俺が語ることでもないんだけど。

●詞にも英語がありませんね。

好きな響きの言葉が日本語には多いんだよね。だけど、あんまりロックには当てはまらないことが多くて。そういう方法論でロックに当てはめていくと、予定調和で終わるじゃん。着物着てライブやれば和製ロックみたいなさ。そんなの今や予定調和でしかないし、どうでもいいじゃん。侍がどうとか、そういう時代でもないし。日本としてのアイデンティティーはもはやそんなことじゃなくてさ。だったらより小さい部分で、自分が思う日本語の使い方を模索したいっていうか。それが“音シリーズ”のテーマでもあったりするね。



「雨音」



●「雨音」も“音シリーズ”ですね。「綴音」と「雨音」の歌詞には、「寄り添う」という言葉があります。

そうそう。まさにそうなんだよ。俺、志村さんのドキュメンタリーを観る前から、すでに「雨音」でその言葉を書いてたんだよね。

●ですよね。「雨音」は『OUTSIDE SINGLES』にも収録されているのに、なぜこちらにも収録したんだろうと思っていたんですが、そこのつながりなんだろうなと感じました。

元々俺の中にあったから、ドキュメンタリーを観たときにグッときたんだろうね。まあ、「雨音」もそんなにライブでやってないんだけどね。実はね、俺の中ではStereophonicsなんだよ、この曲。

●それは正直、意外ですね。

うん、全然似てないからね(笑)。でも俺の中ではStereophonicsでさ。「綴音」と並べて入れたら、形になるかなって思ったの。それで入れただけです。

●こうして過去と未来がつながっていくのも面白いですよね。

だよね。



「EisWein song」



これはもうね……ALICE IN CHAINSです(笑)。

●ハハハハハ。言っちゃいましたね。

俺の中でね、あくまでね(笑)。ただこの曲も本当にパワーがいるんだよ。

●静と動のふり幅もすごいですよね。聴く方も力が入ってしまいます。

そう。いつだったか、大塚(新宿LOFTの店長)にもらったんだよ、アイスワインを。それがすごく甘くておいしいワインなんだけどさ。でも温暖化の影響で、当時あんまり作れなくなってるって話をどこかで見てさ。今はどうか知らないけど。で、温暖化についてとかも、俺言ってたじゃん。“マイナス6パーセント”とか。

●そういう運動があって、実践されていましたよね。

まあ、逆の話もあるよ。今は氷河期で、だからバランスを取ろうとしているとか。でも、地球そのものが俺達人間の手によって変わっていることは事実じゃん。最終的には太陽に飲みこまれて、いずれ死ぬ運命にある星ではあるんだけど、やっぱり温暖化とか大気汚染とか、目の前にいっぱい問題はあってさ。それをテーマに歌を歌うって、ものすごいパワーいるんだよ。

●それはたしかにそうでしょうね。

はっきりと言えないからさ。なにが正しいとかって。だからパワーがいるんだよ。でも、大地のパワーっていうのかな。土のパワーはさ、うちのベランダにある植木たちからも感じるんだよ。海もそうだけど、土のパワーってすごいんだよね。それを表現できたらいいなって思って。で、ワインとか日本酒とかさ、おいしく呑みたいし(笑)。

●最近お近くにおいしいお酒屋さんがあるみたいですからね(笑)。

ハハハハ。高いお酒をね(笑)。でもそういうのもさ、大地ありきじゃん。

●何事もそうですよね。その上で生かされていますから。

土を耕してナンボなんで。それが温暖化や氷河期でなくなるかもしれないってのは怖いよね。それは人間の二酸化炭素によってバランスが取れているというのであれば、それは間違ってる。自然的な発想でいえば、もし本当に氷河期なんであれば、人類が滅亡することで、その次のバランスが生まれるんだから。今生きている人間のために、人間自身がバランスをとってるだけじゃん。それは自然的な発想とは違うから。いつ何時なにが起こるかわかんないよってことも思いながら歌ってるからね。だから……ライブであんまりやりたくはないよね(笑)。

●しかし、まさかワインをあげた大塚さんも、こんな曲ができるなんて想像すらしてなかったでしょうね(笑)。

だと思う(笑)。そうだよね。

●でも、とてもフトシさんらしい曲です。

そうかもね。若干無責任なところとかね(笑)。俺らしいかもしれない。ただ、曲は超絶カッコイイじゃん。

●文句なしに。

だってこれ弾き語りだからね! あとからドラムとベースは足してるけどさ。

●改めて聴くと、音圧ありえないですよ(笑)。

すげえよホント(笑)。でも、俺の中では「Days earlier」がやっぱりいちばんかな。録音した音源としては。



「太陽の花」



●最後の最後を飾るのは「太陽の花」です。これはアルバム2枚の締めとして収録されてますよね。

そうだね。

●以前のインタビューでも話していただきましたが、改めて。

まったく変わらないね。「So」を歌ってて、「俺だってさ…」っていう歌ですよ(笑)。だけど、今また新しい新曲があってさ。詞の内容って意味で「So」に近いものがあって。今さ、もっとわかりやすい詞の在り方に向かってて。「愛と平和です!」って歌いきっちゃうことで伝えようと思ってさ。それはすごいポジティブじゃん。ポジティブをまた今やろうかなって。だからこそ「太陽の花」はより特別感があるというか。この曲があるから、ポジティブな方向に向かえてるからね。「世界の終わりに」(『outside single 0』収録)でも歌ってるけど、俺にとってきれいごとって大事なので。だからこそ「太陽の花」で締めるべきかなって。なにせソロだから、それでいいのかなって。

●良い終わり方だと思います。

でも「太陽の花」を聴くとすごくつらいって声もあってさ。まあ……俺もつらい(笑)。

●ハハハハ。みんなつらい(笑)。

でもそのやりとりも含めて、だからこそ「太陽の花」ってタイトルなんだよね。太陽は花でもあるので。花は太陽であるし。それがジャケットにつながっている。

●2枚とも、枯れた向日葵ですよね。

向日葵はもう『lyrics』からずっとつながってる俺のテーマでもあるから。

●聴いてて思ったんですが、この「太陽の花」のあと、『lyrics』の1曲目である「SLIDE」につながる気がしたんですよね。だから、アルバム3枚をループさせるように考えているのかなとも思いました。

あ〜、そこまで俺は考えてなかったね。でもそれ良いね。すばらしく良いね! みんなそうやって聴いてくれ!(笑)
あ、ライブでも良いかもね。「太陽の花」の次に「SLIDE」があるとね。

●それはすごく前を向ける感じになりますよね。

ね。上がれるしね。そうそう、『lyrics』もiTunesで今でも売れてたりするので。それは嬉しいんだよなぁ。

●6年以上前の作品ですからね。でも、そこもまたこの2枚とのつながりとして、聴いてほしいですよね。

そうだね。ただ、今はこの2枚のアルバムをね。ちゃんとみんなにオススメしていきたいね。

(完)



2014.08.14
interviewer:AKIRA



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update 2014/09/03 23:20 | GALLERY | TOP▲

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