♭ [ flat ]  # [ number ]へ向けての手記

■ライター/ZAKKY・山崎光尚

“流れゆく時”と“今” そして“未来”を結びつける、唯一無二の歌声と鳴り響く音像―

2nd、3rdアルバム同時リリースという、かなり希有な、しかし、然るべき人間が然るべき瞬間に産み落とした大傑作な2枚の作品たち。

アルバムとしては前作『lyrics』以来、実に6年ぶりのリリースとなる。

「え!? もう、そんなに経っているの?」と思われるファンも多いと思うが、それも当然のことかと。とにかく高木フトシという男はソロ活動のシングル音源・DVD等のリリースペースの速さも然ることながら、vezやAKUHといったバンド/ユニットでも精力的に動いているため、時間の経過を忘れさせてしまうのである。

もっと言えば、ボヤっとしていると、置いていかれる存在でもあるのではなかろうかと。

しかし、そんなリスナー側としては気付けば忙殺されてゆく月日の中、この男が世に落としてきた数々の名曲からピックアップされ、新曲も含めた2枚のアルバムを聴くと、「これが今の俺だよ」と言わんばかりの"サラッとしつつも、ハッとさせられる強烈な歌声と音像"に、それこそ時が過ぎるのを忘れ、心を震わされるのではないだろうか。






まず、整理整頓を兼ねた解説をさせていただければ、膨大な楽曲陣の中から『OUTSIDE SINGLES -Best Album-』、ほぼミニアルバムと言っていいシングル『War Seat』、シングル三部作『dancer』『Bite』『Core』からは、『雨音』以外の選曲はなく、新曲も含め実にわかりやすい構成となっている。

まずは、高木フトシ氏からお聞きした、♭[ flat ] 、# [ number ]というアルバムタイトルの由来、選曲に至る経緯を紹介させていただきたい。

アルバムのタイトルは、なんか、1stがLyricだったから、繋がりが欲しいなぁと思って。
音楽に関係する言葉をって。
ただ、そんだけだよ。

アートワークについては、子供の遊びの「だるまさんがころんだ」ってあるじゃん。
(アメリカにおける)「Red light,Green light」って。
大人になってもね、その遊びをしてるような気がしたっていうか。
みんな鬼になりたくないと思うし。なんか、でも、かっこ悪いよね。そういうのはと。


そもそもが、OUTSIDE SINGLEが10枚目になって、自分記念な感じでベスト版を作ったんだけど。それきっかけに、他のシングルもまとめたいと思って。だから、去年の10月あたりから新曲も含め、曲のセレクトを考えつつ。

録音し直すべきものもあると思っていたんだけど、聴き直したら、なんか"渦巻いてるもん"が録られていることに気付いてさ。で、これは、もう二度と再現出来ない気がして。
新しく録るのもいいけど、今一度聴いてほしいって気持ちのほうが強くなったんだ。

特に、『Radio star』とか『Rosemary』、『ふたつの月へ』なんかは、(そもそもの成り立ちが)楽器持たないで藤井(辰好・レコーディングエンジニア)ん家に行って、「ギター貸して〜」とか言って。
パーカッションとかも、適当な板をハンマーで叩いたりして。全部その辺にあったもん借りて録ったんだ。

でも、決してやる気ないとかじゃなくて、ソロは誰も出来ないことをしたかったから。
そう考えたら、良い楽器、良いレコスタといった選択肢じゃ、良い音ってひとつだと思うんだ。みんな同じじゃん?
だから、ゴミ捨て場にあった、mitsu(JEANNIENITRO ex.HATE HONEY)が拾ってきたギターを借りたりとか。まぁ、もちろん金が無いってのもあるけど。

俺には歌しかないって思ってたし、そう言ってたから。
「歌だけで?やれんだろ?」って、自分に言い聞かせてね(笑)。
MIXは藤井ありきだけども。藤沢でのJA¥氏との作品も同じく。今でもアプローチは変わらない。


ここまでの言葉を受けて、やはりこの男は"生まれついてのインディーズアーティスト"なのだと再認識をした。
前述した楽曲のリリースペースの速さ、時の流れの中で進化してゆくその作品たちを歌い続けている上での、「今でもアプローチは変わらない」と言い切れる嘘偽りのない行動と説得力。

そんな、高木フトシ氏もかつて二十歳くらいの時にメジャーレーベルから誘われた経験があるとのことだが、「やっぱ俺には無理!」と、断ったのだそうだ。当時創り上げたという『折れた翼』について、数年前に「今となると歌詞にやっぱり抵抗があるから、書き直そうかと思ったんだけど、なんかしっくりこなくて。そのまま歌うことにした」と耳にしたことがある。

今聴いても、二十歳の若者が創ったとは思えない"それを愛と呼べばいい"と投げかける言葉が特に印象的で、現在でも何の遜色もないその名曲が、近年の作品である『DEVIL INSIDE』(2011年リリース)の楽曲たちに挟まれ、『b』に収録されていることも興味深い。

ここで、曲順についての氏の考えを。

♭[ flat ] 〜# [ number ]の曲順は、"詩の流れ"を大事にしたんだ。
一番自信のある『Days earlier』から始まって「この世界がどうなろうといいさ」という詩には、(声に出しては)歌ってはいないけど「君がいれば」って言葉が頭に付いてる。
歌の思いとして。そこから『太陽の花』までの感じ。


なんだかフトシ氏のこの説明により、本2作を聞き終わった後の、良質なドキュメンタリー映画を見た後のような高揚感が自分の中で納得できた気がした。
"1曲、1曲にはへヴィーローテーションしていたあの時を思い出しつつも、通して聴くと、初めて読むストーリーのような音像"。少なくとも筆者はそう感じていた。

その中において、三つの新曲たちと次曲への並び方も、とても美しいのである。『Voice of you』〜『Time of Dream』、『No regret』〜『Second eyes』、『綴音』〜『雨音』は、それこそ新・旧の時間軸を超えた感覚に特に見舞われるからだ。そんな新曲たちについて、氏は言う。

(セレクトの理由は)アルバムの中にあって、輝いてるから良かったなぁと。
語れることは(特に)無いかな(笑)。
3曲とも素直な詩。綴れ(『綴音』)はね、vezの『杼』を書いた後に書いたもので。
『杼』は外に向けてるけど、こっちは自分に。


そう、この男の物語は、全ての活動を含めて、まだまだ続いているのだ。

最後にかつて、「現在の音楽で唯一オリジナルな要素があるとしたら、歌詞とヴォーカルの声だけ」と、すごく分析的なことを語っていた氏が、"今"発した、その後、考えに変化はあったかという問いに対しての、ある種、衝撃的な発言を―

無いなぁ。むしろ、詩も声も、もはや、、、って感じでもあるかなぁ。
つーか、初音ミクじゃん?正解だと思うよ、初音ミク。
でも、結局は「人」に向かってるから、、、

いや、どうなんだろね。
だから、なんつーか、どうでもいいんじゃない、そうゆうのは。もう。

うん。

まぁ、vezのVoが初音フトシにならないようにがんばる。っていう、、、それだけかな。
いや、初音◯◯ってたくさん出てくるんじゃない?まずいぞ、、、(笑)。


…初音フトシはともかくとして(笑)、リスナーとしては、唯一無二の歌声と鳴り響く音像を今日も、そして明日も聴き続けていきたいと思っていることは周知の事実である。

そして、まだ高木フトシを未聴の方々は、本2作を入り口にしても絶対に間違いではないと断言できる。

冒頭で「ボヤっとしていると、置いていかれる存在」と筆者は書いたが、その真逆のことをあえてここに記したい。

流れゆく時の中で、この男の歌声はいつだって、待っているのだから。


■ライター/ZAKKY・山崎光尚
update 2014/06/09 14:17 | GALLERY | TOP▲

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