“太陽”をテーマとした18枚目となるシングル「黒のフレア」の話を中心に、ここ最近の活動から次回作の構想まで、幅広く語ってもらった。
interviewer:AKIRA
黒のフレア

まさしくそう。元々俺って太陽をテーマにした曲多いじゃん。
●それこそHATE HONEYの「IN THE SUN OF LOVE」とかですよね。
そうそう。あと向日葵とかもね。俺の中では太陽って前向きなイメージなんだよね。だけど今回はちょっと違う方向で書いてる。いずれ太陽がなくなるって話があって、それを考えたときに、今あるものや良いと思われているものがずっと存在しているわけがないんだと思ったんだよ。全部が良いなんてことはとてもナンセンスな話だし。だからその象徴として“黒”という言葉を使ったんだよね。太陽は“黒”でもあるって。
●あれほど不変のものだと思われている太陽でさえ当たり前にあるものじゃありませんからね。しかし「黒のフレア」は久々に重厚な曲だと思います。
そうだね。俺としては「Hell's Kitchen」(HATE HONEYの2ndアルバム)の頃の狂気を取り戻したかったんだよね。それがこの曲である程度できたと思う。なんでだろ?と思うけど。
●歌詞はかなり突きつけているというか、伝えたいものを言い切れている気がします。
うん。「Until the end」って言い切っているからね。そういう終末にどう向き合うか。もちろん(太陽がなくなるということは)百万年とか先の話だから、今生きてる人たちが考えることではないかもしれないけど。だけど今生きている人たちがその好奇心や本能から生まれてくる探求心で、クリアすべき何かを作っていくわけじゃん。その一歩の時間の中に俺達はいるわけだから、大事なことだと思うんだよね。
●多くの積み重ねの上に今の僕らが在るわけですからね。
そう。だから原発のことだってそうなんだよ。俺はもちろん反対で、原発や核兵器がない平和な時代が来ることがいちばんだけど、その開発や研究を完全に止めちゃうのは違うと思うんだよ。今存在する原発というのは、人がコントロールできないものだからやめたほうがいいと思う。でもよりコンパクトでよりシンプルにコントロールできる原発を作れる可能性があるのなら、その研究は続けるべきだよね。当然俺の分野ではないから、他人事なんだけどさ(笑)。
●原発と言えど、善悪で判断することはできませんよね。
というより、悪があるってことを最初から認識したほうがいいんだよ。“利用できる=悪がある”ってことをさ。それが物事の条件であるような気がする。歌詞にある「love asks you」はそういうことで、たったひとつの答えを終わりまでに何と捉えるかが人の生き方だと思うから。あと、震災以降に人の嫌な部分がたくさん見えてきたからさ。だからそこはロッカーとして怒りを込めた。例のごとく「なんでわかんねぇんだ!」って。まあ、俺にだってわかってないけれどさ。
●それでは「,,,for green water」ですが、これは2007年にリリースしたシングルのタイトルになっていましたよね。
これは元々造語でさ、「水と緑」のことなんだよ。そのために生き抜いている人がいるような気がして、その思いを元々あのシングルに込めていたんだよね。そしたら最近スタッフが「グリーンフィンガーズ」(2000年公開のイギリス映画)って映画を持ってきてさ。囚人が更生プログラムの一環で庭師の仕事をして、庭師の大会に出るっていう実際にあった話なんだけど、それが単純に良い映画だったんだよね。そのときにこの曲の詞と向き合えたんだよね。
●もともと途中まで詞を書いてあった曲だったんですか?
そう、途中まであった。だからこういう作り方って初めてなんだよね、多分。で、メッセージはサビに集約されてるね。花が咲かないような場所がどれほどあったとしても、太陽の下にある力の循環で、必ずいつかそこにも花が咲くような気がするから、こういう唄を書いたの。言いたくはないけど、福島県もすごく時間がかかるかも知れないけど、いずれまた花が咲くときがくるから、終わったわけじゃないんだよ。それは花が咲くことによって教えてくれるからね。……かっこいいなぁ、俺!(笑)。
●ハハハハ。とても素敵な話ですね。
でも、俺にはそういう願いが……いや、確信があるんだよね。水と緑と太陽によってさ。もともとそれで地球はできてるはずのものだから。
●以前ブログにこの曲は「蒼い宝石」の続編だと書いてましたよね。
うん。元々この曲の詞を書いている流れの中で「蒼い宝石」の詞ができたんだよね。だからつなげて聴くと面白いかもしれない。「,,,for green water」は「蒼い宝石」の答えでもあるから。
●「蒼い宝石」のほうがもっと重い内容ですよね。
だいぶ自虐的な詞だからね。だから俺の中では「蒼い宝石」のほうが悪だよね。
●そのふたつの曲でひとつにつながるということですね。
そうだね。込めてるものは同じだからね。
●では「太陽の花」ですが、これは詞を読んで本当に驚きました。ここまで赤裸々な詞はフトシさんの曲にはありませんでしたよね。
いや〜、恥ずかしいなぁ(笑)。もともと俺は表現の仕方としては比喩が好きなんだけどね。あいまいな表現のほうが好きだったんだけど、あの震災があってからそれじゃダメだなって知っちゃったんだよね。
●前のインタビューでも「テーマを持って何かをやるのであれば、どうすれば伝わるのかということも考えないといけない」とおっしゃってましたよね。
だから今の気持ちを正直に書いて曲にしたんだよね。それが自分の中で「SO」を越えていれば納得できるから。実際、納得できるものを書けたしね。でもね……恥ずかしいよ(苦笑)。もう本当に正直な気持ちしか書いてないからね。
●そうですね、読めばフトシさんの思いがそのまま伝わる詞だと思います。
周りのミュージシャンとか友達とかにさ、結構言われるのよ。「音楽で世界なんて変えられないよ」とか、「それはおかしいですよ」とか。なにより“愛と平和”って言葉自体が古臭いことだとか。でも俺達ミュージシャンがきれい事を言わないと歌ってる意味ねぇんじゃないかと思うんだよね。誰かが「音楽で世界は変わらないと思いますけど、でも音楽の力はすごいと思います」とか言うのよ。でも「だったら世界は変えられるじゃねえか!」って俺は思う。
●音楽の力を信じられるのなら、「変えられる!」くらいの気持ちはあってほしいですよね。
あと「この世から戦争はなくならないですけど、そういうことが起こらないようになればいいと思います」とかさ。みんなそんな現実的な言い方ばっかりするんだよ。でも俺にとって言い方なんてひとつしかなくて、何を求めているかってことだけだからさ。できなくてもできるって言わなきゃ。まして大の大人がさ、良いと思うことに関しては「できる!」って言わなきゃ一歩も踏み出せねえじゃねぇかって。それを踏まえての詞だからね。……けっきょく、だいぶ弱々しいけど(笑)。
●日記に“「SO」の対極”だと書いていた意味がよくわかりました。
だいぶ弱いよね、この曲(笑)。「俺だって本当はさぁ〜」って曲だから(笑)。本当はこの曲の中で歌ってる愛と平和のくだりは違う詞で、もっとかっこつけたものだったんだよ。だけど愛と平和のくだりを入れないと完成しなかったんだよね。“道化のブルース”を奏でる人間の思いとしては。
●“道化のブルース”という言葉はすごく印象的ですよね。
そのフレーズはすごく悩んだよ。まずブルースを語れるほど俺はブルース聴いてないし(笑)。まして日本人だし、ジャンルとしてはピンとこないかもしれない。でもその言葉の意味そのものは世界中の誰もが持っている感情だから、それがかっこいいなって思ったんだよね。
●この曲を先日の下北沢SHELTERでの終戦記念日のライブで初披露したというのは、すごく意味のあることだと思います。
周りは「SO」を期待してたみたいだけどね(笑)。でも、かっこ悪いことも率先してやらないと物事は伝わらないんだよね。それを43歳にして知った。今まではたいしてかっこ良くもないのにかっこつけることばかり考えていたからさ。だからある意味かっこ悪い曲ではあるね。でも言いたいことは言えてるから、良かったと思う。
outside single [seven]

おお! さすがだね! 基本的にはoutside singleは趣味が出てるからさ、そういったニュアンスが多々出てると思うけど……なんかちょっと悔しいな(笑)。
●え、何でですか?(笑)
すごくオシャレな方向で行ったつもりなんだけどなぁ(笑)。ヒップホップみたいなテイストとか(笑)。こんな髪型でさ(笑)。でもあのシングルはガット・ギター1本で作りたかったんだよね。最初に「moonlight fever」ができたんだけど、その流れの中で、ひとつ階段を上がりたかった。今まで人の音楽を聴いてて、そういうのを自分でも作れたらいいなって感じていたことに挑戦した作品だよね。それで「searching for a heart」ができた。
●逆に「star fall」だけはちょっとカラーが違いますよね。
「star fall」は渾身の一撃だね。HATE HONEYでいう「SUMMER SNOW」みたいな。「夏に雪を降らせるぞ!」って思いがあの曲にはあったけど、この曲は「夜空に星を降らせるぞ」ってさ。そんな説得力のある楽曲を作りたかったんだよね。実は(7月7日に開催された)教会ライブに向けて作った曲でもあてさ。今年のライブは七夕だったから、あの日に星を降らせたかったからね。
●「searching for a heart」は今までにもない曲ですよね。音質も含め、初めて聴いたときは驚きました。オシャレだなって(笑)。
ビビるだろ?(笑) でも有松(元HATE HONEYのドラマー・現在は特撮など)があれをブログで褒めてくれててさ。それはうれしかったよね。元メンバーがそうやって褒めてくれることってそうそうないからさ。それは素直にうれしかったな。でもね、あれギターが難しいんだよなぁ。
●ライブで歌いながらは大変そうですね。
もうさぁ、この歳であんなに練習することになるとは思ってもみなかったからさ。ましてやギタリストじゃないし。でも、やっぱギターってゲーム感覚と同じでさ、クリアできると面白くなってくるんだよね。だからそういった意味では今ギターにハマっているんだと思う。今まではこの音しかないって凝り固まってた部分があったんだけど、それが解きほぐされて、基本とかも考えるようになってさ。そういうのが楽しい……楽しいっておかしいよな。素人かよ(笑)。
●もうソロ7年目ですよ(笑)。でもそういう楽しい気持ちが音にも出ていると思います。
うん、ガットは難しいけどね。何日かギターを弾いてなかったりするときがあると、(ガット・ギターは)全然弾けなくなってんのよ。本当に毎日やってないとダメだと思う。最低でもライブの3日前くらいから弾いてないと本番ひどいことになる(笑)。
●まあ、そうした努力があってできた3曲ですよね。
そうだね。あとあのシングルそのものには震災の影響がすごくある。「searching for a heart」のサビの英語の部分とかさ。
●あのサビに込められた思いは、まさにあの震災の痛みを表すものですよね。
そう。死は常に足元に転がっているっていう話だから。その中で、僕は常に君を探しているっていう。
●そういう意味合いだからこそ、重くネガティブではなく、ポジティブな響きを感じます。
うん、それがまさにニール・ヤングじゃないかなって思う。
●はい、まさに。
でしょ? ニール・ヤングとかローリン・ヒルとかさ。足元にも及ばないんだけど、そういう唄を歌いたかった。
gonvut レコ発
●ではgonvutの話に変わりますが、9月18日にはレコ発ライブが決まっていますが、新曲はもう完成しているんでしょうか?
曲はできてるよ。俺が2曲、(ゴンダ)タケシが1曲。で、今タケシが北海道に行ってるから、あいつが帰ってきたら合わせるって感じだね。俺の曲は自分の部分だけ詞もあがってて。
●テーマのようなものも決まっているんでしょうか?
テーマとしては“遊園地”だね。閉鎖された遊園地のイメージ。人工的に作り上げたテーマ・パークから、人がいなくなった絵をgonvutで歌えたらなって思ってさ。さっきも言った原発のことも含めて、長崎とか広島とかチェルノブイリとか……あげればキリがないくらいそういう場所が世界中にあるわけじゃん。だからgonvutでそれを歌えたら、とても前向きなことを歌えるんじゃないかなと思ったんだよね。……まあ、タケシありきだけどね(笑)。
●gonvutにおける前向きという部分には、ゴンダさんの存在は大きいですもんね。
うん。タケシさえいれば俺も楽しく歌えるかもって思う。だってまず高木フトシと遊園地って結びつかないじゃん?
●イメージには合わないですよね(笑)。でも、それがgonvutなら歌えるということですね。
うん。そのテーマについてはタケシとも話してて、そういう感じで作ってみようと伝えてある。ただレコーディングは……怖かったりする。毎回怖いんだけどね。
●そうですか?それは意外です。gonvutだから、もっと気楽にできているかと。
だってうまくいかない場合もあるじゃん。ふたりのものだから完成してみないとわからないし。
あと、レコーディングが12〜13日で、発売日が18日……無理じゃん(笑)。すでにそこで失敗してる(苦笑)。
●まあ、普通であれば厳しいですよね(笑)。だからスケジュールには“レコ発! 予定!!”と記載されているんですね(笑)。
やっぱり先に言っちゃダメだよね(苦笑)。ソロのほうはちゃんと物ができてから言ってたから良いんだけど。
●でもそういった流れもgonvutっぽいですね。果たして出るのか出ないのか!って(笑)。
そうだね(笑)。……いやいや、出しますよ! ちゃんと出すから(笑)。それはきっと素敵な3曲だと思うから。gonvutを好きな人を裏切らない曲にはなるよ。ただgonvutに関しては曲調を悩んでないぶん……やってる側としては飽きるっちゃ飽きるんだよね(笑)。
●それ言っちゃいましたね(笑)。
ポップ・ソングって退屈だなぁって(笑)。それは否めないよね。今回の新曲もね。特に俺の曲はそうだよ。けどそれがライブで楽しくなれる要因でもあるからさ。曲が簡単なら簡単なほど。
●そもそもgonvutの成り立ち自体がシンプルなものですからね。
そうそう。だから逆に歌に集中できたりするからね。新曲もレコ発ライブもあいかわらず楽しくできそうだよ。
BAD BANKS TOUR

俺この前戸城さんの日記見てたんだけど……なんかアルバム作るっぽくない?(苦笑)
●ボーカリストがそのあたりをわかってないんですね(笑)。
いや、本当。毎月のライヴとかツアーとか正直辛いす、、、トホホっす。年に2回くらいでいいんじゃないかと思うんだけど、、、これ、活字にしといてね。(笑)
●わかりました(笑)。しかしツアーの日程も驚きました。なかなかのタイトさですよね。
だろ? ホントだよ。なによりさ、俺個人としては正直ツアー好きじゃないわけじゃん?
●それは存しております(笑)。
そんな俺が福岡に行き、一週間もかけて東京に帰ってくるのかと思うと……その憂欝さは先月くらいからずっと持ってるよね。そういう意味では若干イライラしてる(笑)。
●それは活字にしちゃうと波紋を呼びそうな話ですね(笑)。
いやいや、誤解してほしくないのは、ライブは楽しみなんだよ。それぞれの土地でしか会えない連中と会えるわけだからさ。だけど、ただ単純に俺は旅が好きじゃないってことなんだよね(笑)。これはどうしようもない。ツアー先でライブ以外に楽しいものは何もないっていうことがわかってる俺としては憂欝だよね。
●それこそ食べ物とかもですよね(笑)。大抵の食べ物は東京で食べられるという結論にフトシさんは至ってますから。
そう(笑)。うまいものもあるんだけどね。ぶっちゃけバンドのツアーなんてさ、ライブ中以外はほぼ罰ゲームだからね!
●そういえば戸城さんは日記にB6BとThe Slut Banksのワンマン vs. ワンマンのようなライブになるとも書いてましたけど。
それはね、戸城さんが大変だと思うよ。今から心配だもん。本人はできると思っているから言ってるんだろうけどさ。ツアー3日目あたりから体が動いてないと思うよ(笑)。でも、そのぶん俺はめちゃめちゃ動くからさ! ぶっちゃけハンパないよ今の俺。なにせほぼステージにいないから(爆笑)。
●ああ、それは噂に聞いてます(笑)。
だから地方の人たちにお願いしたいのは、最前列にある柵に手を置いている人たちいるじゃん。アレは気をつけてほしいんだよね。俺、柵の上に飛び乗るからさ。手を踏んじゃう可能性があるから、だから前のほうにいる人たちは気をつけてほしいね。
●それほど激しいアクションになるってことですね。
戸城さんからは「横浜アリーナかよ!」って笑われたからね(笑)。あんなに狭いステージと客席の間を走り回ってる奴は見たことないって(笑)。まあ、俺には場所とか関係ねえから。ロックンロールは客席に突っ込んでナンボだから。共に歌って叫んでナンボだよ。
●観客には期待以上のパフォーマンスを観せてくれそうですね。
でも、また倒れちゃう可能性があるけどね、福岡で(笑)。
●ハハハハハ。HATE HONEYのときにありましたねぇ、そんなこと。
なんていう冗談も言えるようになったよ、俺も(笑)。でも本当に気を付けないと、1曲目でいなくなっちゃう可能性あるから(笑)。でも、あのときのことは今でも申し訳ないと思ってるよ。で、また広島も飛ばしちゃったりしてな(笑)。
●縁起でもない(笑)。それじゃThe Slut Banksのワンマン・ツアーみたいになっちゃいますよ。
あ、そうか、そういう対応も可能か(笑)。とか言ってね(笑)。大丈夫、倒れないから。だいぶアグレッシブに行くよ!
鴉は鳴き、兎は目を赤く染めたんだ
●では鴉空の変則的な地方2カ所(和歌山・岐阜)のツアー"鴉は鳴き、兎は目を赤く染めたんだ"も決定しましたけど、こちらはどういった経緯で?
それはね、YANAちんがマユちゃん(貴志真由子さん。X JAPANのhideさんと交流のあった難病の女性。2009年10月に逝去)のお母さんに和歌山レモネード・カフェでのライブ・オファーをもらったらしくて、それで決まったの。で、だったらCannibal Love It(Cannibal Rabbitのうさと日置による変名アコースティック・ユニット)の2人も連れていけたらなって。奴らも奴らでhideさんが大好きだから。だからあいつらと一緒に行けたら楽しいのかなって。それからあいつらには岐阜でのライブをブッキングしてもらって、決まった2本だね。まあ、楽しみだよ。……ただなぁ、いかんせん俺、旅が嫌いだからさぁ(笑)。
●またそこに戻るんですね(笑)。やっぱり都内を出ること自体ダメですか?
都内っていうか、俺は(行動範囲が)三軒茶屋〜渋谷までだから(笑)。恵比寿や中目黒はギリギリOKだけど。
●ハハハ。そこは我慢して頑張っていただきたいです。
次へ
●では今後の展望だったり、思いだったりありますか。
日記にも書いたんだけど、本能ってなんだろうって最近思ってて、それをテーマに詞を書き始めてる。そういう曲をソロと鴉空で作りたいかな。俺達が失った本能のせいで、何が起こっているだろうって。それはプラスなのかマイナスなのかとかさ。そういうことを今いちばん人間は考えなきゃいけないような気がするんだよね。例えば地震が起きた直後に水の買い占めをしていた人たちだって本能で動いたわけじゃん。そこでそういう人たちが何を失って何を得てるのかってことを考えたいよね。
●そういうことを考えるきっかけになったことってあるんですか?
今年の8月って、墓参りに行けてなくてさ。そしたらネットのニュースに「お墓参りに意味はあるのか」って特集があって。無意味だっていう意見が多数だったんだけどね。たしかに俺もそう思う。だけど、自分のためにはなってるんだよね。
●今年僕は盆の時期になんとなく墓参りに行きました。で、行って良かったなって思ったんですよね。完全に自分勝手な判断ですけど。
だろ? そうなんだよ。行った本人が良かったと思えるのが墓参りなんだよ。意味なんてねぇんだよ。だから「お墓参りに意味はあるのか」なんて議論自体がおかしいんだよ(笑)。でも、墓参りには行かなかったけど、ベランダに水と線香を用意して、手を合わせたの。それは本能なんだよね。俺の中では。
●その感覚はすごくわかりますね。理屈じゃないというか。
うん。だって本能って当たり前のことじゃないじゃん。大人は当たり前のことだって言い方をするけど。なんて言っている俺も大人だけど(笑)。俺にしてみれば当たり前のことじゃないんだよ。
●実はすごく不自然な行為だったりしますよね。
そう。言ってしまえば結婚式とか葬式だって当たり前じゃねえし。俺にはまったく当たり前のことじゃないんだよね。そういうことで思ったのが本能かな。わかりやすく言うと、すげぇ好きな彼女とかいるのにさ、グラビア雑誌とか見て「やべぇ!超カワイイ!」って思ったりするわけよ(笑)。
●男におけるもっともシンプルな本能ですよね(笑)。
そのくせ、そんな自分が煮え切らなかったりするわけ(笑)。「こんな俺は俺じゃない!」ってさ(笑)。だけどそれが俺の本能なんだよ。で、それをどんどんつなげていくと、政治家の話とか聞いてたら嘘臭いなと思ったり、心がこもってないなぁって思ったりするんだけど、アレがあの人にとっての保身なわけじゃない。自分の生活を持続するためのしゃべり方なわけでしょ。それも本能なんだよね。
●ある種の防衛本能ですよね。そういう意味では、震災以降に日本という国の人々の本能が良くも悪くも見えてきましたよね。
うん、だから面白いなぁって。それをテーマにしたら曲ができるかなって。あ、何よりのきっかけは「太陽の花」だね。あれを書いたことによって、そういう唄もこれから歌えるなって思う。THE ROOSTERSの「恋をしようよ」じゃないけどさ。あれもまさに本能の唄じゃない。
●もう本能のみのロックンロールですよね。
だけど聴いてて気持ちいいじゃん。ああいう痛快さが今必要だと思う。さすがだよ、ロックの先輩は。
●それは新作も期待できそうですね。なんだか次回予告の話をいっぱいしてしまいましたが(笑)。
ハハハハ。まあ、いいんじゃん? そういう次回作の構想はたくさんあるし。その前にアルバム作れって話もあるけど(笑)。
●そうですね、もう『lyrics』から3年以上経っていますから。
でも俺にはシングルのほうが合ってる気がするんだよね。ひとつのテーマがあったら、3曲あれば言い切れる気がする。生意気だけど。俺としてはそのほうがまとまるんだよね。……できればライブも3曲くらいがとてもやりやすいけど(笑)。
●いやいや、それはちょっと少なすぎるでしょ(笑)。
でもそのほうが濃いライブができる気がする。集中力が濃縮して保てる時間がそれくらいだから。俺には20分が限界だよ(笑)。
●集中力といえば、ソロにgonvutにB6Bに鴉空にとここ最近は立て込んでますよね。そのモチベーションを維持するのも大変じゃないですか?
もうね、ひどいよマジで(苦笑)。でもさ、音源の制作ペースは落としたくないわけよ。ペースが落ちちゃうと俺にとってストレスになるんだよね。遅れれば遅れるだけ他のことにも影響出るからさ。だから作りたいと思うことに対しては、ちゃんと作るということは心がけてる。そうじゃないと俺自身がダメになるから。でも曲ができなかったり、世に出しちゃダメだって判断したものは当然出さないからさ。今のところそれはないから……音楽の神様には感謝してるよ(笑)。
●今までも含め、これだけのペースを保っていけているというのは、何かしらそういう力がありそうですよね。
音楽の神様っているんだなぁって思うもん。特に「太陽の花」が降りてきたときには、「いるな〜!」って感じた。そして俺はまだ見捨てられてないなって思うよ(笑)。
(完)
2011.8.26
interviewer:AKIRA